2007 Fiscal Year Annual Research Report
アトラス実験における超対称性粒子の早期発見のための研究
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18740151
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
金谷 奈央子 The University of Tokyo, 素粒子物理国際研究センター, 助教 (80418780)
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Keywords | 超対称性 / ハドロンコライダー / LHC実験 / ATLAS実験 |
Research Abstract |
超対称性粒子の発見には検出器の理解、バックグラウンドの評価が必要不可欠となる。今年度は特に終状態にレプトンが2つある事象におけるバックグラウンドの不定性を評価した。これらの事象は予想される生成断面積は多くの場合小さいが非常にクリーンであり、発見の有意性に対する不定性は小さいと期待される。発見をより確実なものとするために、実データを用いてバックグラウンドを評価し、その不定性を見積もった。Wボーソンとトップからくるバックグラウンドを分けて推定することが難しいため、包括的にこれを行った。問題は事象選択後、Wとトップの事象の固さ(hardness)が異なるためWとトップの比率並びに事象の固さの違いを正しく見積もることが重要であることが分かった。様々な事象生成プログラムを用いて、推定したバックグラウンドレベルに対する不定性は大凡20%程度であることが分かった。しかしながら発見の信頼性を高めるためには更なる研究が必要だと考える。 また超対称性らしき事象が発見された後にすべき研究についても検討した。発見直後は統計量が少ないため、それらの事象の包括的に取り扱い、標準理論を超える理論の同定もしくは構築の手助けになるような観測量が与えられないか検討した。レプトンを含む事象の割合、ジェットのマルチプリシティーと衝突直後に生成された超対称性粒子の質量スケールを用いてモデルパラメータの一つであるm0(universal scalar mass)に対して制限を与えられることが分かった。但し、バックグランドによってこの情報が歪められてしまうこともあるので、この点を改善し、かつ期待される系統誤差を考慮した上で測定量の有意性を正しく評価するのが次の課題と考える。
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