2006 Fiscal Year Annual Research Report
高分解能光散乱分光による量子液滴における低エネルギー励起状態の研究
Project/Area Number |
18740171
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
是枝 聡肇 東北大学, 大学院・理学研究科, 助手 (40323878)
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Keywords | 量子固体 / 量子液体 / ブリルアン散乱 / 音波物性 / 水素 / 超高分解能レーザー分光 / 誘導ブリルアン散乱 / フォノン |
Research Abstract |
本年度は高分解能誘導ブリルアン利得/損失分光法によって,まずバルクの固体水素/液体水素における超音波による光散乱スペクトルをこれまでになく高感度かつ高精度に取得することに成功した.この測定装置は高分解能特性と高感度特性を両立するものであるが,温度上昇に対して非常に敏感な量子凝縮系では入射光強度をあまり強くすることができないため,この高感度特性は本研究において本質的に重要なファクターである.試料作成装置については固体水素の液相加圧成長法による加圧(30〜40気圧)に十分耐えうる大型のセルを用いた.まず,固体水素では音響フォノンの周波数と吸収係数を5Kから融点近くまでの温度範囲に渡って高精度に測定することができた.これまでに高分解能ブリルアン散乱による温度依存性の測定はなく,本研究が固体水素における初めての高精度音響フォノン分光となったと考えている.解析の結果,わずか10K程度という狭い温度範囲にも関わらず,超音波吸収は非平衡な量子力学的regimeから熱平衡・熱力学的regimeまでをすべて経験することが明らかになった.これは量子固体における強い非調和性の現れであると解釈される.液体水素においては近年その量子性が再び注目されており,特に熱伝導率や粘性率などの輸送係数に対する量子効果の大きさに興味が持たれているが,本研究では超音波吸収をこれまでにない非常に高い精度で測定することに成功し,特にこれまでほとんど測定のなかった体積粘性率の値と,その温度依存性を実験的に明らかにすることができた.その結果,液体水素における体積粘性率が理論的な予測とは逆の温度依存性を示すことやその値が理論的な予測よりもかなり小さいことが分かった.
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