2006 Fiscal Year Annual Research Report
鉄スピンクロスオーバー錯体における光誘起高スピン相の高周波ESR測定による研究
Project/Area Number |
18740183
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
木村 尚次郎 大阪大学, 極限量子科学研究センター, 助手 (20379316)
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Keywords | スピンクロスオーバー錯体 / 高周波ESR |
Research Abstract |
今年度は、鉄スピンクロスオーバー錯体における光誘起高スピン相のESR信号の観測を行う準備段階として次に述べるようなことを行った。まず鉄スピンクロスオーバー錯体の代表的な物質の一つであるFe(phen)_2(NCS)_2の粉末試料に関し、光を照射しない状態でのESR測定を〜55Tのパルス強磁場、730〜1017GHzの高周波領域で行った。また、可視光照射をしつつ高周波ESR測定を行うためのクライオスタットの作成に取り組んだ。これまで我々が用いてきたESR装置は、試料を透過した電磁波をクライオスタットの底部で反射させ、クライオスタット直上に設置したディテクターによって検出する方法を用いてきたが、この場合、電磁波の伝搬する2本のライトパイプをデュワー内に収める必要があるため、可視光照射用に導入する光ファイバーのための充分なスペースをとることが難しい。そこで試料の直下にディテクターを設置してESRを測定するクライオスタットを新たに作成した。この型であればライトパイプは一本で良く、光ファイバーのための充分なスペースがとれる。ライトパイプとディテクター、信号ラインをステンレス製の容器に内装することで、パルス磁場発生時の電磁ノイズや液体ヘリウムのバブリングの影響を受けない様に設計し、通常のESR測定であればこの型のクライオスタットでも問題なく行えることを確認した。来年度は更に光ファイバーを導入できる様に改造し、可視光照射下での高周波ESR測定を鉄スピンクロスオーバー錯体に対し行う予定である。
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