2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18740191
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡辺 真仁 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 助教 (40334346)
|
Keywords | 価数転移 / 量子臨界点 / 磁場誘起相転移 / 密度ゆらぎ / 固体液体相転移 / 量子スピン液体 |
Research Abstract |
価数転移の量子臨界点が磁場によってどのように制御されるのか、その機構を明らかにした。有限温度における1次転移の終端点が、磁場をかけることにより、絶対零度に抑えられることを示し、その温度依存性をクラウジウスクラペイロンの関係式を導くことにより明らかにした。ここで導いた関係式は、これまで知られていた高温極限でのみ正しい関係式を絶対零度につなぐものであり、磁場によって量子臨界点を制御する際に重要な意義をもつ。さらに絶対零度において量子臨界点が非単調な磁場依存性を示すことを見出した。これにより、価数のクロスオーバーを示す物質に磁場をかけると、量子臨界点が誘起されることが明らかとなった。このメカニズムは磁場下でゼーマン効果と近藤効果によりエネルギーをともに得しようとする協力現象であることを明らかにした。この機構は、CeIrIn_5において、40テスラの磁場を加えると一次転移が誘起される奇妙な振る無いに説明を与えるものであり、この物質で観測されている圧力下での超伝導転移温度の異常な増大の起源を解明する上で重要である。また、この機構はYbXCu_4のX=Inにおける一次転移を説明し、同程度の近藤温度をもつにもかかわらず、異なった磁場応答を示すX=AgとX=Cdに自然な説明を与える。すなわち、価数転移の量子臨界点からの近さで定義される、近藤温度とは別のエネルギースケールが存在することを理論解析の結果は示しており、CeやYbなどを含む価数揺動物質を理解する上で重要な意義をもつグラファイトに吸着されたヘリウム3の第2層で形成される4/7固体相が、固液相境界近傍に位置していることを見出し、第3層への強い密度ゆらぎにより、実験で観測されている飽和磁場の異常な増大が説明できることを示した。さらに4/7固体相でのスピン液体状態の安定化に密度ゆらぎが重要な寄与をしており、フラストレートしたハバード模型のモット転移近傍で実現するスピン液体と本質的に同じ起源をもつことを指摘した。
|
Research Products
(2 results)