2006 Fiscal Year Annual Research Report
非一様な強相関電子系における電子状態、特に輸送現象の理論的研究
Project/Area Number |
18740197
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
紺谷 浩 名古屋大学, 理学研究科, 助教授 (90272533)
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Keywords | 光学ホール係数 / 輸送現象 / 高温超伝導体 / バーテックス補正 / 超伝導発現機構 / 不純物効果 / 重い電子系 / 強相関電子系 |
Research Abstract |
○強相関電子系における不純物効果の理論的研究: 反強磁性量子臨界点(AF-QCP)近傍の強相関電子系では、わずか1%の非磁性不純物が系全体の電子状態を劇的に変化させることが知られている。たとえば高温超伝導体では、1%のZn不純物により巨大な残留抵抗が生じたり、Znの周囲数サイトにわたって反強磁性相関が増大する。また非磁性不純物ひとつあたり、1μBに達する大きな局在モーメントが発生し、その大きさはAF-QCP近傍で発散的に増大する。これらの現象はいずれも通常金属におけるフェルミ液体的挙動から大きく逸脱し、長年未解明の難問であった。今回我々は、FLEX近似を拡張して空間的に非一様な状態に適用できる近似理論(GVI理論)を開発して、高温超伝導体における非磁性不純物問題を解析した。その結果、上記の実験事実を第一原理的に再現することに始めて成功した。我々の研究は高温著伝導体のみならず、重い電子系や有機物超伝導体など、さまざまなQF-QCP近傍の強相関電子系に適用できると考えられる。 ○重い電子系CeCoIn5,CeRhIn5における輸送現象の研究: CeCoIn5,CeRhIn5はAF-QCP近傍に位置する重い電子系であり、反強磁性相に隣接してd波超伝導状態が実現するなど大変興味深い物性が出現するため、現在盛んに研究されている。これらの物質では、AF-QCP近傍でホール係数がI/Tに比例して低温で著しく上昇し、また磁気抵抗がTの4乗に比例する「修正コーラ則」が成り立つなど、高温超伝導体と共通した現象が観測されるなど、大変興味深い実験事実が観測される。我々はこの事実を反強磁性揺らぎに由来するカレントバーテックス補正がもたらすと考えて、理論的解析を行った。CeCoIn5,CeRhIn5に対応する3次元ハパード模型をFLEX近似により解析し、3次元系でもカレントバーテックス補正が(2次元系以上に)重要になることを見出した。我々はCeCoIn5,CeRhIn5におけるホール係数、磁気抵抗、ネルンスト係数の三者三様の著しい非フェルミ液体的挙動を、カレントバーテックス補正を考慮することで「統一的に」理解できることを明らかにした。
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Research Products
(5 results)
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[Journal Article] Non-Fermi Liquid Behavior in the Magnetotransport of CeM ln5 (M : Co and Rh) : Striking Similarity between Quasi Two-Dimensional Heavy Fermion and High-Tc Cuprates2007
Author(s)
Y.Nakajima, H.Shishido, H.Nakai, T.Shibauchi, K.Behnia, K.Izawa, M.Hedo, Y.Uwatoko, T.Matsumoto, R.Settai, Y.Onuki, H.Kontani, Y.Matsuda
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Journal Title
J. Phys. Soc. Jpn. 76・2
Pages: 024703(15)
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