2006 Fiscal Year Annual Research Report
パルスESR測定法を用いた光伝導性ポリマーにおける電荷分離状態のスピン相関距離
Project/Area Number |
18740204
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
秋元 郁子 和歌山大学, システム工学部, 助手 (00314055)
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Keywords | 光導電性ポリマー / 電荷分離状態 / アクセプター / パルスESR / エコー信号 / スピン間距離 / 光物性 / 磁気共鳴 |
Research Abstract |
本研究は、強力なアクセプター機能を持つ低分子をドープした伝導性ポリマー(ポリビニルカルバゾール、PVCz)を対象とし、光励起で導入される電荷分離状態についてスピン間の相関に着目し、特にスピン間の距離をパルスESR法を用いて解析しようとするものである。 初年度は、PVCzにアクセプターとしてTCNQ(テトラシアノキノジメタン)をドープした試料について、幾つかのドープ濃度の試料を用意し、室温から10Kにわたって、基礎光学スペクトル、定常(CW)ESR測定、パルスESR測定を実施した。 1)カルバゾール基からTCNQへの電荷移動吸収帯(500〜800nm)を励起すると、ESR信号が発生することを確認した。CW-ESRでは1〜5mol%の範囲でドープ濃度による信号強度の著しい変化は確認されなかった。 2)電荷移動吸収帯を励起し、パルスESR法によりスピンエコー(ESE)検出を行った。40Kの低温でCW-ESR信号と同一のエコー信号によるESR信号を確認し、2P-,3P-ESEEM測定を行った。3mol%の試料では、緩和時間Tm(〜T_2)〜840ns, T_1〜22μsが得られ、さらに変調信号のフーリエ解析により水素核との相互作用による変調(15MHz)と幾つかの核による変調(1〜5MHz)を確認した。 3)異なる周波数のパルスマイクロ波を用いる電子-電子二重共鳴法(DEER法)を、CW励起下で試みたが、まだ信号を得るには至っていない。緩和時間Tm(〜T_2)が1μs以下であることが原因かもしれないので、濃度の違う試料について測定する必要がある。 4)高磁場下での測定への拡張を考え、現有の超伝導マグネット(Oxford, SpectroMag)へ導入できるパルス用マイクロ波キャビティの設計・加工を行った。一方で、補助金で購入したコールドユニットを用い、より簡便に低温での測定ができるように装置整備の設計を行った。
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