2008 Fiscal Year Annual Research Report
EAスピングラスにおける温度カオス効果、及びそのダイナミクスへの影響
Project/Area Number |
18740226
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐々木 志剛 Tohoku University, 大学院・工学研究科, 助教 (80400282)
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Keywords | スピングラス / 温度カオス効果 / 長距離相互作用系 / 確率的カットオフ法 / アルゴリズム / モンテカルロ法 / 磁気双極子系 / ランダムスピン系 |
Research Abstract |
RKKYスピシグラスや粒子配置がランダムな磁気双極子系など、長距離相互作用を持つランダムスピン系が、短距離相互作用しかもたないEAスピングラスと同様に温度カオスの性質を持つかどうかを調べるため、昨年度に引き続き、長距離相互作用系のための効率的なアルゴリズム(確率的カットオフ法)の開発を行なった。昨年度の段階では、この手法はスピンが格子状に規則正しく並んでいる場合にのみ適用可能であったが、現実のランダムスピン系ではスピンがランダムに配置されている場合がほとんどなので、重力多体系のシミュレーションなどでよく用いられる空間の8分木分割を組み合わせることにより、本手法を粒子配置がランダムな場合にも適用可能なものに改良した。また、比熱・熱平均エネルギーやレプリカ交換法における交換確率を短い計算時間で評価するための手法もあわせて開発した。従来の手法では、1モンテカルロステップ当たりの計算時間や比熱・熱平均エネルギー・レプリカ交換確率の評価に必要な計算時間は全てN^2オーダーであったのに対し(ここでNはスピン数)、今回申請者が開発した手法を用いると、これら全ての計算時間をNlogNオーダーに抑えることができるため、計算時間の大幅な削減が可能となる。 また、磁気双極子相互作用が働いている磁性粒子が3次元空間中にランダムに配置されているモデルに本手法を適用した研究も行なった。このモデルがスピングラス相転移を起こすかどうか、これまではっきりしていなかったのだが、今回の研究により、かなり低い温度でスピングラス相転移が起きていることが明らかとなった。ただし、このモデルのスピングラス相の温度範囲はかなり狭いため、温度カオスの有無の検証をするところまでは至らなかった。
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