2006 Fiscal Year Annual Research Report
飛行時間差法を用いた低エネルギー電子衝撃による分子の非弾性散乱閾値の精密分光
Project/Area Number |
18740248
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
星野 正光 上智大学, 理工学部, 助手 (40392112)
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Keywords | 原子・分子物理 / 電子分光 / 低エネルギー電子 / 閾分光 / 飛行時間差法 |
Research Abstract |
本研究では、低エネルギー電子散乱実験で広く普及している従来の静電型エネルギー選別器を用いた手法とは異なる手法で非弾性散乱閾値の精密分光実験を行う目的で装置開発を行ってきた。これは、従来行われてきたクロスビーム法と飛行時間差法を組み合わせた手法(飛行時間差型分光器と呼ぶ)である。低エネルギー電子ビームのパスル化と散乱電子の検出時間までの飛行時間差の関数として散乱電子を検出することにより、電子のエネルギー損失スペクトルに対応した飛行時間差スペクトルを測定する。 今年度は、上智大学に新たに飛行時間差型分光装置を設置するにあたり、回転機構および電子制御部の製作から、真空槽・ガス導入部・排気系の開発を行った。電子制御部についてはパルス電子線を生成するためのパルスジェネレータを設備備品として購入した。パルスジェネレータから出力される信号と擬似パルス信号を用いての計測テストを行い、計測回路および検出部の動作確認を行った。また、低エネルギー散乱電子を輸送するためのドリフト管を設計・製作し、消磁のためミューメタルの加工を行い、真空排気を開始した。次年度には今年度製作した各部分を組み合わせることにより実際に測定可能となる。まず初めに、He原子を標的として用い弾性散乱と電子励起を区別した飛行時間スペクトルを入射エネルギー約40eV程度で測定し、閾値までエネルギーを下げる予定である。 また、今年度は飛行時間差法による閾分光を行うための準備の一環として、従来から用いている半球型静電エネルギー選別器を動作確認のため取り付け、閾値よりエネルギーの高い領域における規格化のための測定をさまざまな標的に対して製作と同時並行で行った。本実験結果は論文として報告した(研究発表1-6)。本実験結果に基づき、飛行時間差で得られた弾性散乱から閾値近傍における断面積の絶対値化が次年度以降可能となる。
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