2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18740259
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山上 達也 東京大学, 大学院工学系研究科物理工学専攻, 助手 (80376491)
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Keywords | イオン液体ゲル / 3次元極電 / 高分子構造・物性 / ナノ材料 / シミュレーション工学 |
Research Abstract |
カーボンナノチューブ・イオン液体(CNT-IL)アクチュエータは2つの電極層に電解質層が挟まれた3層構造をしている。電極層間に電圧を加えると、電極への充電により陽極側を内側にして屈曲し、変型量は電極層の電気伝導率や界面の静電容量に依存する。渡邊(横国大)らは両極に形成される電気二重層について、陰極の静電容量が陽極よりも大きく、陰極の静電応力が大きくなり曲がると考えている。安積(産総研)らは変型量は充電電荷量に比例し、単位電荷当たり変形量はイオン液体のカチオンサイズが大きくアニオンサイズが小さいほど大きくなる事から、両極に集まるイオン体積差と考えている。このように、動作原理の全体像は未解明である。H18年度、各電極を分離した2層アクチュエータを作成し、カチオンのアルキル基の長さを変えた4種のイミダゾリウム系イオン液体中で陽極・陰極の各々の屈曲の計測に成功した。本研究により、(BMI,HMI,OMI)BF4のイオン液体では両極にほぼ同じ電圧が印可され、陽極は膨脹する一方、陰極は一時的に収縮し、その後、膨脹する事を観察した。両極のゆっくりとした膨脹は両極とも同程度であり、静電効果と考えられる。初期の一時的な陰極の膨脹と陽極の収縮は3層アクチュエータでの屈曲原理を示し、イオン体積差やゼロ点電荷の両者の効果が考えられるが、一時的な収縮量が印可電圧に依存する事からシミュレーション結果と合わせ、イオンの堆積効果が重要と結論づけた。但し、カチオンのアルキル基が最も小さいEMIBF4では、多くの電圧が陰極に印可され陰極側のみが大きく曲がる電位非対称性が見られた。これは、陽極表面で何らかの漏れ電流による現象と解釈している。CNT-ILアクチュエータで各々の電極に印可される電圧を計測し、イオン液体の種類による動作原理の違いを示したのは世界的にも初めての研究成果である。
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