2006 Fiscal Year Annual Research Report
タマムシは本当に玉虫色か?-角度変化が少ない干渉色の研究
Project/Area Number |
18740261
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
吉岡 伸也 大阪大学, 生命機能研究科, 助手 (90324863)
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Keywords | 構造色 / 干渉 / 光学効果 |
Research Abstract |
タマムシの羽(翅鞘)の表層内部には、屈折率の異なる二種類の層が交互に積み重なり、多層構造をなしている。それらの膜一層分の厚さは、およそ光の波長の数分の1程度で、それぞれの境界面で反射された光が、干渉を引き起こして、羽の金属光沢を生み出していると考えられている。しかし、タマムシの角度変化を観察すると、通常"玉虫色"と呼ばれる単純な連続的角度変化とは必ずしも一致しないことがわかる。というのは、緑色の度合いが強く、角度をつけて観察したときの青色は、弱くしか見えないからである。本研究の目的はタマムシの鞘翅の内部にある緑色を強調する物理的な機構を明らかにすることにある。 緑色強調の物理的な機構にはいくつかの可能性が考えられていたが、光学測定・TEM+EDS実験などの実験を行った結果、高い屈折率を持つ層には屈折率の虚部が存在すること、すなわち光の吸収が存在し、さらに分散があることが明らかになった。したがって、現段階では青色の光が相対的に強く吸収するされるため、緑色が強調されると考えられる。光吸収物質としては、一般的には有機的な色素、無機的な金属錯体の二つが考えられる。組成分析実験の結果、高濃度の金属元素は観測されなかったため、前者の有機物(おそらくメラニン系の色素と考えられる)が、その起源として最も妥当であることが分かった。 また、自然界にはタマムシ同様、通常の光干渉から予測される色の角度変化とは、一見異なる光学特性を示す生物がいる。その一つとして、ドバトの首の羽根に注目し、羽根の内部にある発色性の微細構造を解明し、その発色のメカニズムを明らかにした(Journal of the Physical Society of Japan誌に発表)
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