2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18740266
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
森下 徹也 独立行政法人産業技術総合研究所, 計算科学研究部門, 研究員 (10392672)
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Keywords | シリコン / 分子動力学 / 第一原理計算 / 過冷却 / 液体 / 相転移 / 多形 / ガラス |
Research Abstract |
液体シリコン(Si)の低密度相の検証のため、過冷却下の液体Siの振る舞いがこれまでに多くの実験で調べられている。しかしながら、実験における過冷却は融点下300K(〜1400K)が限界で実験精度もあまり高くない。このような状況を踏まえ、本年度は第一原理分子動力学(MD)計算により、過冷却による液体Siの密度変化と構造変化を調べた。MDでは周期境界条件を採用しているため、比較的低い温度(〜1000K)まで過冷却が可能である。本計算から、冷却するにつれ1200Kまでは密度が増大するが、さらに冷却すると密度が減少し始め密度極大を示すことが初めて明らかになった。水が4℃で密度極大を持つことはよく知られているが、液体Siの密度極大は実験では観測されていない。我々の計算から、500Kほど融点から過冷却できれば実験で密度極大が観測できることがわかった。報告されているこれまでの実験結果と比較すると、RhimらとZhouらの実験データをそれぞれフィッティングした2次曲線の外挿値が、我々の計算とよく一致していた。一方、1次関数ではこのような広い過冷却領域の密度変化を記述するのは難しいことがわかった。さらに液体構造の温度変化を調べるために、動径分布関数と構造因子を様々な温度で計算した。これより、液体構造は融点下500K(〜1200K)まで冷却してもあまり大きく変化しないことがわかった。ところがきらに過冷却を進めると、1200K以下では液体構造が大きく変化した。これは、冷却と共に四面体構造が部分的に回復していると考えるとうまく説明できる。実際、四面体性の度合いを示す秩序変数を計算した結果、冷却と共に四面体性が1200K以下で急激に増加していることがわかった。このような冷却に伴う特異な構造変化は、液体Siに対する本計算で初めて明らかになった。
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Research Products
(3 results)