2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18740266
|
Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
森下 徹也 National Institute of Advanced Industrial Science and Technology, 計算科学研究部門, 研究員 (10392672)
|
Keywords | シリコン / 分子動力学 / 第一原理計算 / 過冷却 / 液体 / 相転移 / 多形 / ガラス |
Research Abstract |
昨年度に引き続き,液体シリコン(Si)のポリアモルフィズム(液-液相転移)の検証を目指して,過冷却液体Siの物性を第一原理分子動力学計算により調べた。液体は一般に均一だと考えられているが,過冷却が深くなると動的な不均一性が出現し,様々な緩和現象において通常のデバイ緩和からのズレが観測される。このような異常性はガラス転移や液-液相転移と深く関連するため,本年度は液体Siの過冷却に伴う不均一性の出現を検証した。昨年度の計算では,約1200Kで液体の密度が最大になることが明らかになったが,本年度はさらに冷却を進めた結果,1000Kたおいて著しい不均一性が液体構造に出現することを見出した。Si原子はsp3共有結合を作りやすいため,結晶では四配位の正四面体構造を形成するが,融点近傍の液体中では四面体構造は大きく歪んでいる。しかしながら,1000Kでは正四面体に比較的近い構造が間欠的に形成されることがわかり,空間及び時間に関して液体構造が大きく揺らいでいることが明らかになった。このような揺らぎは,低密度液相への転移(液-液相転移)の前駆現象と考えることができる。時間的な構造揺らぎが動的性質の不均一性を引き起こしていることもわかり,局所構造の緩和が非デバイ型であることが明らかになった。間欠的な正四面体構造の形成は,構造の時間揺らぎのスペクトルに1/f揺らぎとして反映されており,複数の特徴的な緩和時間が存在することが示唆される。 以上はバルク液体の結果であるが,本年度はスリット状細孔に閉じ込めた擬2次元系の液体Siに対しても計算を行った。バルク状態とは異なり,冷却によりナノスケールの新しい層状構造へ転移することがわかった。このような新奇の転移現象は,バルクのSiの理解にも有用である。
|