2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18740266
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
森下 徹也 National Institute of Advanced Industrial Science and Technology, 計算科学研究部門, 研究員 (10392672)
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Keywords | シリコン / 分子動力学 / 第一原理計算 / 過冷却 / 液体 / 相転移 / 多形 / ガラス |
Research Abstract |
我々のこれまでの計算や他の実験グループの研究から、シリコン(Si)のアモルファス相は少なくとも2つ以上存在することが明らかになっている。本年度は、通常のアモルファスSi(低密度アモルファス : LDA)とは異なる第2の新しいアモルファス相(高密度アモルファス : HAD)の様々な物性を、第一原理分子動力学計算により調べた。 LDASiは局所的に四面体構造を保持しており、それがネットワーク状につながっている。一方、HDASiの局所構造は、ひずんだ四面体構造にさらに1つの風子を隙間に押し込んだ構造とみなせることがわかった。結果として、原子の平均配位数はLDAの4に対し5に増加している。また、この局所構造は結晶Siの高圧相であるB-tin構造のそれと近く、最近のイギリスの研究グループによるHDASi形成の実験結果とも調和的である。この実験グループは、HDASiの電気抵抗率が非常に低いことを報告している。そこで、密度汎関数計算に基づく電子状態計算をLDAとHDASiの両方に対して行い、電子状態の比較を行った。その結果、LDAは半導体である一方HDAは金属的であることが理論的に確かめられた。局所的な電子状態密度から、局所的な構造ひずみが金属的な性質を増強させることがわかった。またLDAに対する計算から、ダングーリングボンドを持つ3配位局所構造はバンドギャップに強く局在化した電子状態を形成することが確認され、我々の計算精度の高さを確認できた。 さらに、振動の状態密度計算も実行し、HDASiにおける原子間ボンドがLDASiのそれに対して弱くなっていることもわかった。これは四面体構造のひずみの反映といえる。
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