2006 Fiscal Year Annual Research Report
火山流体系の長期変動の地震学的解明-アナログ記録から探る阿蘇火山微動活動-
Project/Area Number |
18740267
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
山本 希 東北大学, 大学院・理学研究科, 助手 (30400229)
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Keywords | 火山性微動 / 火山性流体 / 煤書き記録 / アナログ記録デジタル化 / 火山活動 / 火道システム |
Research Abstract |
本研究は,これまでの研究により火道システムの構造が解明されており,火山性流体と地殻の相互作用の最良の実験場ともいえる阿蘇火山を題材に,地震学的手法により火山性流体の物性変化の定量化を行うことを目的とする.静穏期の阿蘇火山での流体系の挙動は解明されているため,残す課題は,火山活動の推移に伴って流体系がどのように変化するかを明らかにすることである.そこで,本研究では,固液系における波動現象の数値モデリングを行うとともに,1930年代以降記録・保存されてきた火山性微動のアナログ波形記録をデジタル化し再解析を行う. 本研究では長期的な火山性微動の変動の検出に主眼をおくため,研究計画初年度である今年度は,過去のアナログ記録のデジタル化に集中的に時間・資源を投資し研究を行った.記録のデジタル化にあたっては,紙記録のスキャン画像から効率的に波形を抽出するために,デジタイズ用ソフトウェアの開発を行い,長期間に渡る連続記録の数値化を行った.開発したソフトウェアはQtによるGUIを備え,予測フィルタによる波形トレースを行うものであり,本研究以外の用途にも利用することのできる汎用的な設計となっている.一方,このようにして得られた記録を解析した結果,1930年代の煤書き記録の中に約10秒の周期を持つ火山性微動が捉えられていることを初めて明らかにした.この微動は,従来の研究で指摘されていた約5秒周期の第二種微動に対応した火道システムの基本モードであり現在広帯域地震計で観測される15秒周期の長周期微動に相当するものと考えられる.またこの火山性微動の周期は時間的に変化をしており,その変化は表苗的な火山活動と強い相関を持つものであることも明らかになった. 来年度以降,火道システムの数値モデリングを進めることにより,火山性微動周期の時間変化と火山性流体の変化を定量的に理解することが可能になると期待される.
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