2006 Fiscal Year Annual Research Report
地震波速度・異方性構造に基づく沈み込み帯におけるマントル上昇流システムの解明
Project/Area Number |
18740268
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中島 淳一 東北大学, 大学院・理学研究科, 助手 (30361067)
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Keywords | 地震波速度構造 / 地震波トモグラフィー / 沈み込み帯 / マントル / 上昇流 |
Research Abstract |
地震波トモグラフィー法により,日本列島下の三次元速度構造を推定し,西南日本のマントル上昇流分布および新潟-神戸歪集中帯の深部構造を解明した.また,S波スプリッティング解析により,沈み込む太平洋プレートによるマントル対流の方向を明らかにした. 1. 西南日本におけるトモグラフィー解析により,沈み込むフィリピン海プレートの直下の深さ100-300kmに大規模な地震波低速度域が存在することを明らかにした.その低速度域は中国地方の日本海沿岸に分布する第四紀火山直下まで連続的にイメージングされ,マントル上昇流を反映していると推測される.また,その上昇流の一部は紀伊半島に至ることから,それが紀伊半島での高3He/4He異常と関係しているというモデルを提唱した. 2. 顕著な内陸の歪集中帯である「新潟-神戸歪集中帯」の深部構造を推定した結果,歪集中帯に沿った下部地殻に顕著な低速度域が存在し,場所によっては最上部マントルも低速になっていることが明らかになった.また,得られた速度構造は,歪集中帯はその走向方向に三つのセグメントに分類出来ることを示唆しており,各セグメントで下部地殻・最上部マントルで低速度異常の原因が異なる可能性を指摘した. 3.北海道および東北地方においてS波スプリッティング解析を行い,速いS波の振動方向の空間変化を明らかにした.東北では沈み込み方向にほぼ平行である速いS波の振動方向が,北海道では沈み込み方向とは斜交し,むしろプレートの最大傾斜方向と平行になる.このような空間的な変化は本研究により世界の沈み込み帯で初めて確認されたものであり,マントル上昇流の流動方向およびその役割を解明する上で,極めて重要な地球物理学的観測事実である.
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