2008 Fiscal Year Annual Research Report
地震波速度・異方性構造に基づく沈み込み帯におけるマントル上昇流システムの解明
Project/Area Number |
18740268
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中島 淳一 Tohoku University, 大学院・理学研究科, 助教 (30361067)
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Keywords | 地震波速度構造 / トモグラフィ / マントル上昇流 / スラブ / 火山 |
Research Abstract |
地震波速度トモグラフィ法により、東北から関東に沈み込む太平洋プレートの詳細な三次元地震波速度構造を推定した。その結果、含水鉱物から成る海洋性地殻に対応する地震波低速度域が、東北では深さ80-90kmまで、関東では深さ120-150kmまでイメージングされた。海洋性地殻が低速度から高速度になる深さは、上面地震帯といわれる海洋性地殻内の地震活動が活発な領域とほぼ一致する。これらの結果は、海洋性地殻での脱水反応がその深さで起こっており、それに伴ってスラブ内地震活動が活発になっていると考えると説明することができる。また、関東で低速度域の及ぶ深さが急激に深くなるのは、沈み込むフィリピン海プレートが太平洋プレート直上に沈み込んでいるために、マントルから太平洋プレートへの熱供給が妨げられ、温度上昇が遅れているためであると解釈できる。さらに、太平洋プレート直上の深さ70-110kmにイメージングされた厚さ10-20kmの低速度層は、プレート内の含水鉱物の脱水反応によって放出された水がマントルのかんらん岩と反応して形成された蛇紋石層であると考えられ、プレートから放出された水がさらに深部へ運ばれることを示唆している。 また、北海道東部に沈み込む太平洋プレートについて、二重深発地震面上面と下面付近の速度構造を詳細に推定したところ、下面の地震に沿って顕著な低速度域が存在すること、面間(上面と下面の間)は概ね高速度異常を示すことが、面間でも地震活動が活発な領域では低速度異常を示すことなど、が明らかになった。つまり、プレート内で比較的多量の水が存在するのは上面と下面に沿ってのみであり、面間は地震活動が極めて活発な領域を除きほぼ無水であることが示唆される。これらの結果は、プレート内で発生する地震は「脱水脆性化説」で説明可能であることを示す重要な観測事実である。
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