2006 Fiscal Year Annual Research Report
東アジアの天候に影響するテレコネクション・パターンの力学と予測可能性
Project/Area Number |
18740286
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
渡部 雅浩 北海道大学, 大学院地球環境科学研究院, 助教授 (70344497)
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Keywords | テレコネクション・パターン / 北極振動 / 予測可能性 / 力学大気モデル |
Research Abstract |
本研究では、1週間から1ヶ月程度の時間スケールで卓越する大気循環変動である「テレコネクション・パターン」のうち、特に東アジア域の天候に影響する北極振動(AO)や北大西洋振動(NAO)に着目してその力学と予測可能性に関する知見を得ることを目的としている。この時間スケールでは、遠く離れた地域での大気変動が大気中のエネルギー伝播などの過程を経て、東アジア域の天候に影響し得るので、全球的なデータの解析および全球大気モデルを用いた研究が必要である。 申請書で述べたとおり、今年度はまず、過去数年間の数値予報プロダクトを詳細に解析し、北大西洋域に生じるブロッキングなどの大気変動が射出する波動のエネルギーが、冬季のアジアジェットに沿って数日で伝わり、東アジア域の循環を変える過程を明らかにした。また、アンサンブル予報プロダクトの解析より、北大西洋域の循環場の予測が、日本付近の天候予測精度向上に重要であることも明らかになった。上記の成果は、現在論文として投稿準備中である。 折りしも、2005/06年および2006/07年の冬は、それぞれ負位相と正位相のAOが卓越し、日本は記録的な寒冬と暖冬に見舞われた。これらの現象は本研究の課題と密接に関連するので、急遽力学大気モデルと大気大循環モデルを用いて要因分析を行い、新聞・雑誌・テレビなどのメディアを通じて情報発信した。これは学術的成果とは言えないが、タイムリーに研究成果を社会へ還元することができたのは思わぬ成果と言える。 1ヶ月以内のテレコネクション・パターンの予測には、より短い時間スケールの高低気圧波動との非線型相互作用が鍵となる。以前から行っていた、大気循環の長周期・短周期成分の相互作用を陽に表現する線型のクロージャーモデルの開発を終え、本年度にその成果が3編の論文として公表された。上記の最近2年間の異常気象の要因分析の結果、東アジアの天候には北太平洋で卓越する太平洋/北米(PNA)パターンも重要であることが分かったので、次年度はこのクロージャーモデルを用いて、PNAの生成維持過程の力学およびその予測可能性を調べる予定である。
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