2007 Fiscal Year Annual Research Report
エルニーニョ/南方振動の長期変調に関する熱力学的研究
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18740291
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
東塚 知己 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特任助教 (40376538)
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Keywords | エルニーニョ / 南方振動 / 気候の長期変調 / 太平洋 / 大気海洋結合モデル / 熱収支解析 / 季節変動 / インドネシア通過流 / 熱帯域 |
Research Abstract |
前年度の研究で、太平洋熱帯域の蓄熱量は、夏にピークを迎えるエルニーニョの際よりも冬にピークを迎えるエルニーニョの際の方が、大きく減少することが明らかになった。このエルニーニョの季節性は、季節変動に伴う背景場の違いにより対流活動偏差の大きさが異なることとインドネシア通過流を介したインド洋の影響が季節によって異なることによることが明らかになり、その長期変調が、エルニーニョそのものの多様性において重要な役割を果たしていることが示唆された。特に、インドネシア通過流の影響については、これまで国内外で議論されていなかった成果である。そこで、今年度は、インドネシア通過流に関する感度実験を中解像度海洋大循環モデル(米国のGFDL/NOAAで開発されたModular Ocean Model version 3.0(MOM3.0))で行った。具体的には、南シナ海通過流が通過する海峡を開いた場合(CTRL)と閉じた場合(NOSCST)で、NCEP/NCAR再解析データの年平均風応力・熱フラックスデータで、11年間スピンアップし、その後、月平均データで、10年間駆動した。マッカーサー海峡における南北流速の鉛直プロファイルを比較したところ、CTRLでは、観測と同様、亜表層(深さ約110m付近)に極大が現れたのに対し、NOSCSTでは、表層に極大が現れた。その結果、マッカーサー海峡を通過するインドネシア通過流による熱輸送量は、CTRLで0.38PW、NOSCSTで0.56PWになった。以上より、南シナ海通過流の存在によって、インドネシア通過流の熱輸送量が0.18PWも変化し、太平洋熱帯域の熱収支に大きな影響を与えていることが明らかになった。
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Research Products
(9 results)