2008 Fiscal Year Annual Research Report
東アジア縁辺海における大陸棚斜面に沿う沈降流とそれに伴う物質輸送
Project/Area Number |
18740292
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田中 潔 The University of Tokyo, 海洋研究所, 助教 (20345060)
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Keywords | 沈降流 / 大陸棚斜面 / 縁辺海 / 東アジア |
Research Abstract |
東アジア縁辺海の大陸棚斜面において沈降する密度流とそれに伴う物質輸送に関する研究を、昨年度に引き続き実施した。本年度は特にストリームチューブモデルを用いて、海水沈降の基礎的な力学過程と海水混合過程を調べるとともに、沈降海水生成の重要な要因である上空の気象環境についても検討した。先ず、日本海については、海水の沈降が生じていることが観測的に示唆されているウラジオストック(ロシア)沖の海域を対象にして、Peter the Great Bay内でブライン排出によって形成された高密度陸棚水が、大陸棚斜面を沈降する過程を調べた。その結果、この海域における大陸棚斜面が世界的にも極めて急峻であることが、海水沈降の力学に重要な影響を及ぼしていることが明らかになった。すなわち、例えば世界の主要な海水沈降海域であるグリーンランド沖や南極ウェッデル海などでは大陸棚斜面の傾斜(正接)は〜0.01程度であるのに対して、日本海ウラジオストック沖での傾きは約0.1と大変急峻である。そのため、Peter the Great Bayから大陸棚斜面に流出する高密度陸棚水は、グリーンランド沖やウェッデル海などでの高密度陸棚水に比べてかなり容易に大陸棚斜面を沈降することが可能である(グリーンランド沖やウェッデル海などでは斜面下向きに働く重力と上向きに働くコリオリ力がバランスする地衡流が形成され易く、高密度陸棚水は斜面を容易には沈降できない)。また、そうした沈降は2001年初冬に顕著に生じていたことが海洋観測から知られているが、2001年初冬には該当領域でおよそ10年振りの記録的な厳冬であったことが分かった。その他、オホーツク海等における海水沈降についても検討し、高密度陸棚水がオホーツク海中層に貫入する可能性を示唆した。
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Research Products
(2 results)