2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18740299
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
奈良 郁子 独立行政法人国立環境研究所, 水土壌圏環境研究領域, NIESボスドクフェロー (70414381)
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Keywords | 溶存有機物 / 安定炭素同位体 / 放射性炭素同位体 / 湖沼環境 |
Research Abstract |
日本各地の湖沼において、溶存有機物(Dissolved organic matter ; DOM)の漸増が報告されている。DOMの発生源対策が早急に必要とされているが、DOMが環境中でどのように生成・輸送され、湖沼へと運搬されていくかという循環過程は、現在のところほとんど理解されていない。そこで本研究では、湖水DOMの起源を推定する新しい分析手法として、「安定及び放射性同位体解析」に注目し、霞ヶ浦湖水および周辺河川水位を用いて,放射性炭素同位体比(Δ^<14>C_<DOC>)と安定炭素同位体(δ^<13>C_<DOC>)のそくていをおこなった。 霞ヶ浦湖水および河川水試料の放射性炭素同位体比(Δ^<14>C_<DOC>)は、約-200‰を境にして湖水試料と河川水試料とで、明瞭な違いを示した(湖水試料;-212‰〜-13‰、河川試料;-475‰〜-17‰)。これは、湖水試料および河川水試料におけるDOMが、重い(年代として若い)Δ^<14>C_<DOC>値を持った湖水DOMと、軽い(年代として古い)Δ^<14>C_<DOC>値を持った河川DOMとに、それぞれ同位体的に識別可能であることを示し、放射性炭素同位体測定が、霞ヶ浦におけるDOMの起源推定を行うための、非常に有効な指標であることを強く示している。 霞ヶ浦湖水における溶存有機物中の安定炭素同位体比(δ^<13>C_<DOC>)は-26.3‰から-24.1‰の間に、また、河川水試料は-26.6‰から-24.7‰の間にプロットされた。Δ^<14>C_<DOC>値が湖水と河川水試料とで明瞭に異なる値を示すのに対し、いくつか例外されるデータはあるが、本研究におけるほとんどの湖水試料及び河川水試料のδ^<13>C_<DOC>は、-26‰から-25‰の間で変動し、湖水および河川水における違いは認められなかった。この結果は、霞ヶ浦及び周辺河川水におけるDOM中のδ^<13>C_<DOC>値を決定する要因が、「湖水由来DOMと河川水(陸起源)由来DOMの違い」と単純に帰結できないことを示している。霞ヶ浦湖水及び周辺河川水のδ^<13>C_<DOC>値は、起源の違いだけではなく、藻類の増殖速度の違いやDOMの分解に伴う同位体分別の変化などが複雑に影響していることが予想される。
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