2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18740302
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
一柳 錦平 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球環境観測研究センター, 研究員 (50371737)
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Keywords | 水安定同位体組成 / 領域気候モデル / 台風 / 降水 / 水蒸気 |
Research Abstract |
今年度は台風の集中観測を行った.2006年9月15-16日に沖縄県先島諸島を通過した台風13号をターゲットとして,石垣島において降水と水蒸気の安定同位体観測を行った.雨量計は石垣島内に3地点準備したが,2地点は風で飛ばされて測定できなかった(最大瞬間風速67m).そのため,降水は熱帯農林水産業研究センターで降水量1mmごとにサンプリングを行った.また,水蒸気は液体窒素を使ったコールドトラップによるサンプリングを6時間ごとに行い,16日午前5時から6時にかけて台風の目の水蒸気を採取することに成功した.台風の目の水蒸気観測は世界的にも例が無く,非常に貴重なデータを取得することができた. その結果,台風外側のアウターバンドからインナーバンドにかけて,降水の同位体比は徐々に低くなる.それに対して,台風の目付近の壁雲による降水の同位体比は非常に高い結果となった.水蒸気の同位体比も,ほぼ同じ傾向となった.降水の電気伝導度(EC)を測定すると非常に高い値であることから,台風の壁雲付近は強風によって巻き上げられた海水の飛沫が降水に混合していることが明らかとなった. また,領域気候モデル(WRF)を用いて台風の進路と降水分布を再現することに成功した.その出力データをインプットとして,水蒸気と降水の同位体比を計算するオフラインモデルを作成し,初期解析を行った.その結果,降水とその同位体比の分布パターンは再現できたが,同位体比は観測した値よりもかなり低い値となった.今後はWRFの出力データも含めて,同位体過程の計算やそのパラメータについても改良する必要がある. 今年度は台風の直接観測に成功し,とても貴重なデータを取得できた.来年度以降にこれらの研究成果を国際会議(すでに3件を登録済)で発表し,また国際誌に投稿する予定である.
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