Research Abstract |
2006年9月15-16日に沖縄県先島諸島を通過した台風13号について,石垣島で台風外側のアウターバンドから,インナーバンドの壁雲,眼の中の降水と水蒸気観測に成功し,水安定同位体比の測定を行った。台風の眼の降水,水蒸気の酸素安定同位体観測は世界で2例目であり,しかも,水素同位体比,d-excess,塩分濃度の同時観測は世界初である。その結果,台風のアウターバンドでは徐々に同位体比が低下するが,中心付近のインナーバンドでは海水と飛沫の蒸発により同位体比が上昇することが初めて観測された。この成果は国際誌に受理された(Fudeyasu et al.,JGR,in press)。また,その後も石垣島で降水と水蒸気の観測を続けており,水蒸気の同位体比の季節変化,日変化を明らかにした。その結果,台風の同位体比は顕著に低く,冬季に北から来る同位体比が低い水蒸気よりも,さらに低いことが明らかになった。 同位体領域モデル(Iso-RSM)は研究協力者の芳村によって開発され,全球の同位体再解析データの結果をネスティングした,世界初の現実的な高解像度シミュレーションである。グリッドの解像度20kmで台風13号の計算を行った結果,アウターバンドでの同位体比の低下と,インナーバンドでの急激な上昇は再現できた。しかし,d-excessはうまく再現できておらず,海水の飛沫が考慮されていないのが原因であると推定される。今後さらに,モデルの開発を進めていく予定である。
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