2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18740302
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
一柳 錦平 Kumamoto University, 大学院・自然科学研究科, 准教授 (50371737)
|
Keywords | 水安定同位体組成 / 領域気候モデル / 台風 / 降水 / 水蒸気 |
Research Abstract |
2008年9月12-15日に沖縄県先島諸島から台湾にかけて迷走した台風13号について, 石垣島で台風の降水と水蒸気の安定同位体比の測定に成功した. 前回(T0613)の反省を受けて,今回は室内で降水を連続的に測定できるようにした. 今回は台風の眼には入らなかったが, 台風の前面から後面にかけて, アウターバンドの降水は10分から30分間隔で, 水蒸気は6時間間隔でサンプリングに成功した. 3年の科研でそのうち2年も台風観測に成功した. その結果, 台風前面のアウターバンドでは中心に向かうにつれて徐々に同位体比が低下するが, 後面では外側に向かうにつれて同位体比が上昇する, この傾向は前回の台風と同じであり, 中心方向に向かってレインアウト効果により同位体比が低下することで説明できる. 今回は台風の壁雲から眼に入らなかったため, また風速も20m/s程度とそれほど大きくなかったため, 海水飛沫の影響は認められなかった. これは台風の壁雲よりも外側では, 海面からの蒸発や海水飛沫の影響は少なく, レインアウト効果が大きいという前回の観測結果(Fudeyasu et.al., 2008)を支持するものである. また, d-excessは台風前面では高く, 後面では低いことが明らかとなった. d-excessは台風前面では10以上, 後面では10以下であり, 強制蒸発の影響(通常は20以上と大きくなる)は認められない. 今後は, すでに完成している同位体領域モデル(Iso-RSM)によって今回の台風を再現し, 台風前面と高面のアウターバンドの同位体比とd-excessの違いについて考察する予定である.
|