Research Abstract |
本年度も引き続き,客観解析データ(観測データ)の解析により,冬季東アジアモンスーンとそれに関連する大気循環変動の解明の為の研究を行った。冬季東アジアモンスーン変動の研究にとっては,中高繹度大気循環に固有な内部長周期変動の1つである北極振動(AO)的な循環変動の理解も重要である。初年度の本研究により明らかになった,冬季モンスーン変動に伴って対流圏上層に見られるWest Pacific(WP)パターン的またはEurasian(EU)パターン的な循環変動は,比較的西日本から中国南部にかけての領域を中心とする気温変動をもたらす傾向にある。一方,AO的循環変動は,比較的北日本から北東シベリアにかけての領域を中心とする気温変動をもたらす傾向にあり,さらに冬季の寒気中心が北東シベリアに存在する事からもAO的循環の研究は重要である。そこで本年度は,真冬(1月)に見られる北極振動(AO)的な循環の典型的時間発展を主に調査した。その結果,1月のAO的な循環偏差の形成に先立ち,11月のユーラシア大陸上で惑星波の上向き伝播の強さが平年とは異なる傾向にある事が分かった。この上向き波束伝播異常は,ユーラシア大陸上を南東に伝播する等価順圧的な外部ロスビー波が気候値惑星波に重畳する事によって生じる。こうして生じた惑星波の上向き伝播の変化は,翌月(12月)の成層圏の極渦の強さを変化させ,その極渦変化が徐々に下方に拡大し,真冬のAO的な構造が形成される事が判明した。本研究は,ある限定された領域を水平伝播する外部ロスビー波が,上方伝播する惑星波の構造を部分的に変化させる事を通じ,極渦の強さに影響を及ぼす例を初めて示すものである.また,この成果により,真冬の日本の天候の予測可能性の向上も期待される。なお本研究は,国際学術誌に投稿,受理された。 以上,研究に大きな前進が見られた。これらの成果を基に,さらに複数の論文を作成する。
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