Research Abstract |
今年度5月から6月にかけて,フランス南東部のSt.Andre les Alpesとイタリア中央部のUrbino-Monte Neroneにおいて,白亜紀海洋無酸素事変によって堆積した黒色頁岩OAE 1a,1b,2層の野外調査を実施するとともに,高解像度でのサンプリングを行った.合計500試料を採取し,採取した黒色頁岩サンプルのうち,OAE1bの200サンプルに対して,有機炭素および硫黄含有量,酸素・炭素同位体比の測定を行うとともに,微化石の抽出を行った.また,抽出した微化石(浮遊性有孔虫,底生有孔虫,放散虫)および砕屑粒子(石英,雲母,植物片)に関しては,種あるいは鉱物の同定を行うとともに,堆積岩1gあたりの個体数を計測した.また,黒色頁岩試料の研磨切片および薄片を合計50個作成し,堆積構造,生物擾乱の程度を観察・測定した. これらの研究結果を基に,OAE1bの区間では,陸源砕屑物量,有機炭素および硫黄含有量,浮遊性有孔虫・放散虫化石の個体数は正の相関を示していることが明らかになった.一方,これらとは逆に,底生有孔虫の数は,OAE1b区間で全くいなくなることが明らかになった.このことから,OAE1bの無酸素事変では,陸からの栄養塩の供給の増加が,海洋表層の生産性を上昇させ,その結果,海洋の底層において酸素の欠乏を引き起こしたことが明らかになった. 以上の解析結果を,福岡市で行われた国際会議(17^<th> International Sedimentological Congress)や北海道大学で行われた微古生物学リファレンスセンター研究発表会で講演した.
|