Research Abstract |
岩石間隙水中の溶存イオン分布を調べるために,高速遠心分離器を用いて岩石(多孔質流紋岩)の間隙水を抽出し,遠心力を段階的に上げて溶液組成の変化を調べた.溶液中の陽イオン,陰イオン濃度はイオンクロマトグラフを用いて測定した.溶存Siの濃度は,モリブデンブルー法で測定した.溶存イオン濃度(Na^+,K^+,NH_4^+,Ca^2+,Mg^2+,Cr^-,NO_3^-,SO_4^2-)は,0-1000Gの遠心力(全聞隙水の0-60%を抽出した段階)ではあまり変化が見られなかったが,1000-10000G(同60-90%)では大きく増加した.溶存Siの濃度は遠心力によらずほぼ一定,もしくは>1000Gで減少した.pHは約5-6で,遠心力による変化は認められなかった. 遠心力が高いほどより細い間隙にある水が抽出されるため,遠心力が上がるに連れて間隙水の組成は界面近傍の組成に近くなると考えられる.水・岩石界面では,固体表面から溶解したイオンが溶液中に拡散し,界面からバルク溶液に向かって濃度勾配が生じる.遠心力の増大に伴う陽イオンと陰イオン濃度の増加は,この溶解・拡散による濃度プロファイルに相当すると考えることができる.拡散プロファイルの形状には,各イオンの拡散係数が関係する.Na^+,K^+,NH_4^+,Ca^2+,Mg^2+,Cl^-,NO_3^-SO_4^2-については,濃度変化のパターンが比較的類似しており,バルク溶液中の拡散係数の文献値が各イオン間で類似していることと調和的である。一方,溶存Siは,バルク溶液中の拡散係数が他のイオンと類似しているにもかかわらず,濃度変化のパターンはかなり他のイオンと異なっている.このことは,界面近傍において,Siは他の元素とは異なった拡散挙動を示すという可能性を示唆している.
|