2006 Fiscal Year Annual Research Report
上部マントルにおけるホウ素循環経路の解明:実験岩石学的アプローチ
Project/Area Number |
18740346
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
太田 努 岡山大学, 地球物質科学研究センター, 特別契約職員(助手) (80379817)
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Keywords | 地球化学 / 岩石・鉱物・鉱床学 / 地殻・マントル物質 / ホウ素 / 高圧実験 |
Research Abstract |
本研究では,実験岩石学的手法を用いて地殻および上部マントル中で安定な含水鉱物と流体との間のホウ素分配を明らかにし,上部マントルにおけるホウ素の循環経路を解明する.また,本研究においては,微小な実験生成物のホウ素同位体組成を高精度で分析するためにSIMSを用いるが,そのための標準試料を準備することも重要な課題である.そこで本年度は地殻物質(泥質岩)中の含水鉱物(白雲母)に重点を置き,1,実験生成物中の白雲母のホウ素濃度分析,2,また白雲母中のホウ素同位体組成分析のための標準試料作成を行った. (1)天然の泥質岩に電気石(含ホウ素珪酸塩鉱物)を加えた出発物質を用いて高圧実験を行い,実験生成物のホウ素濃度をSIMSで分析したところ,電気石は4-5GPa,700-800℃の高圧条件で分解し.それによって放出されるホウ素のほとんどが白雲母に分配されることが明らかになった.従来の,固相-流体.相間のホウ素分配に関する研究では,ホウ素は液相濃集元素であると考えられていた.本実験によって従来の見識と相反するボウ素の振る舞いが明らかになったので,この知見を加味した論文を作成・投稿した(2007年3月現在査読中). (2)白雲母分析用の標準試料として,白雲母,安山岩,玄武岩組成のガラス物質(試薬ないし天然試料の溶融実験),および天然の白雲母,黒雲母,リチウム雲母の単結晶を準備し,それらの主成分元素およびホウ素濃度の均質性をEPMAおよびSIMSを用いて検討した.その結果,準備した天然の雲母結晶は組成不均質が顕著で,標準物質として適切なものは得られなかったが,ガラス物質に関してはほぼ均質な化学組成の試料を得ることができた.今後,ICPMSやTIMSを用いてホウ素同位体組成を分析し,マトリクス効果を検討する必要があるが,標準試料として使用可能なガラス物質は作成できた.
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