2007 Fiscal Year Annual Research Report
原子レベルの材料特性に基く半導体ナノスピントロニクスデバイスシミュレータの開発
Project/Area Number |
18749006
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
相馬 聡文 Kobe University, 工学研究科, 助教 (20432560)
|
Keywords | 半導体スピントロニクス / スピン依存伝導 / グラフェン / 非平衡グリーン関数法 / スピン軌道相互作用 |
Research Abstract |
原子レベルの材料特性に基く半導体ナノスピントロニクスデバイスシミュレータの開発を目的として,平成19年度は,スピン依存電気伝導シミュレータの核となる部分に関しての開発を終えた.このシミュレータは,用いるタイトバインディングハミルトニアンの基底セットの選び方に依らず汎用的に用いる事ができる.具体的な適用例としてまず,密度汎関数タイトバインディング法を用い,ジグザグ端を持つグラフェンナノリボンを用いたトランジスタ型素子の電気伝導に関する研究を行い,バンドギャップが存在しないにも関わらず通常のMOS-FETに類似した電流の飽和が得られる事が明らかとなった.今回得られた結果においてスピンは重要な役割を果たしていないが,現在,スピンに依存する交換相互作用を取り入れる事によるスピン依存伝導の研究を進めており,研究機関の終了までには成果が得られることが期待できる.更に,sp3s^*タイトバインディング法に原子レベルでのスピン軌道(SO)相互作用を取り入れ,それと非平衡グリーン関数法を組み合わせる事により,InAs/GaAs/InAs/GaAs/InAs二重障壁量子井戸素子におけるスピン偏極電流の研究を行った.この素子は,非磁性材料を用いた半導体へのスピン注入という観点から非常に注目されているものである.本研究の結果,この系において重要であるとされる2種類のスピン軌道相互作用機構:BIA(Bulk Inversion Asymmetry)機構とSIA(Structural Inversion Asymmetry)機構が,これらの機構に関する特別な仮定を置くこと無しに自然に再現される事が分かった.具体的には,系にバイアスを掛けていない場合,BIA機構のみに起因するスピン偏極透過率が表れ,系にバイアスが掛けられた場合,SIA機構によってスピン偏極率が増幅される事が明らかとなった.
|