2008 Fiscal Year Annual Research Report
原子レベルの材料特性に基く半導体ナノスピントロニクスシミュレータの開発
Project/Area Number |
18749006
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
相馬 聡文 Kobe University, 工学研究科, 准教授 (20432560)
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Keywords | 物性理論 / 量子閉じ込め / スピンエレクトロニクス / 半導体物性 |
Research Abstract |
半導体スピントロニクスにおける重要な課題の一つはスピン偏極電流を生成する事であるが, その手段の一つとして, スピン軌道相互作用の大きな狭ギャップ半導体を用いた二重障壁共鳴トンネル素子に着目し, その特性を理論的に明らかにする為のシミュレータの開発と検証を行った. スピン軌道相互作用を原子レベルで取り入れる為に, 原子一個当たり5つの軌道(sp3s^*基底セット)と原子内のスピン軌道相互作用を仮定した強結合近似を採用し, 電子の透過特性の計算には再帰グリーン関数法を用いて共鳴トンネル現象におけるスピン偏極に関する計算を行った. 材料としては, 井戸層及び電極にはInAsを仮定し, 障壁層の材料としてはGaAsの場合とAlSbの場合を考察した. 原子レベルのシミュレーションの結果, InAs/GaAs系の場合にはこれまで予測されている通りバルク反転非対称性に起因するスピン分離と構造反転非対称性に起因した共鳴ピークのスピン分離が現れるが, 電子が障壁層の影響を強く受ける場合には, これまでの単純な予測からは大きく異なる結果が得られる事が明らかになった. 更に, InAs/AlSb系の場合, 井戸層と障壁層でanion原子が異なるため, 井戸/障壁界面での構造の詳細がスピン分離に強く影響を与えうる事も明らかとなった. 更に, 本課題で開発したシミュレータを用いて, 究極の半導体材料である炭素原子を用いたナノスピントロニクス素子の一例として, グラフェンナノリボンにおけるスピンフィルター効果の研究を行った. その結果, グラフェンナノリボンの端に誘起されるスピン偏極に起因したスピンフィルター効果をゲート電圧によって制御出来る事が明らかとなった.
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