2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18750002
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
中山 哲 北海道大学, 大学院理学研究院, 助手 (10422007)
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Keywords | 量子ダイナミクス / 量子液体 / 時間相関関数 / クラスター展開法 / 液体水素 |
Research Abstract |
本研究は、クラスター展開法と効率的なフィルタリング手法を基にした新たな量子多体系ダイナミクスの手法を開発し、単純量子流体に対して数値的に正確な(収束が得られると厳密な値となる)時間相関関数を得ることを目的としている。そこで、本年度はクラスター展開法を基にした数値計算手法の開発を進め、第一近似となる二体相関を取り入れた計算を行った。二体の複素時間遷移要素はDiscrete variable representation (DVR)法による基底関数法で数値的に正確に求め、それを基に多体系の複素時間遷移要素を構築する。最終的にモンテカルロ積分により有限温度における時間相関関数を得る。 具体的な系として、他の手法で広く計算されている液体水素を取り上げ、25Kにおける時間相関関数の計算を行った。静的な性質を求める虚時間のみでの計算では、厳密なエネルギー期待値(経路積分モンテカルロ法により得られる)を98%以上の精度で再現し、クラスター展開がこの場合非常に有効的であることを示した。複素時間遷移要素の精度は、エネルギーや構造関数の期待値等、原理的には時間依存しない物理量の時間依存性を調べることにより議論し、物理的に興味ある時間範囲で十分な精度があることを確認した。時間相関関数の計算では速度相関関数を求め、得られた結果を他の手法と比較し、精度や適用性等を詳細に議論した。また、他の手法では線形な演算子で記述できる時間相関関数しか扱えない場合が多いが、本手法は非線形な演算子も取り扱うことができるため、中性子散乱実験で得られる動的構造因子を密度相関関数から得ることにも成功した。
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