2008 Fiscal Year Annual Research Report
生体分子による金属活性中心の電子状態および反応の制御に関する理論的研究
Project/Area Number |
18750011
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
鷹野 優 Osaka University, 蛋白質研究所, 助教 (30403017)
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Keywords | 密度汎関数法 / 金属タンパク質 / 雷子状態計算 / 自然軌道解析 / 化学結合 |
Research Abstract |
生体は、呼吸や光合成などの生命維持に必要とされる機能を実現するために微量の金属を利用している。その際、周りの蛋白質が配位することで金属の持つ特性を制御しており、その機構を明らかにすることは生命現象の理解に重要である。本年度は海悽無脊椎動物に含まれる酸素運搬蛋白質であり、二核の鉄活性中心をもつヘムエリスリン(Hr)の活性中心が蛋白質のつくる静電場中でどのような影響を受けるのかを密度汎関数法を用いて調べた。 Themiste dyscritum HrのX線結晶構造解析のデータ(PDB ID : 1HMO(酸素結合型)、1HMD(酸素非結合型))をもとに、二核鉄活性中心に配位するヒスチジンをメチルイミダゾールに、アスパラギン酸とグルタミン酸を酢酸イオンに置き換えたモデルを構築した。基底関数として鉄イオンにはTatewaki-Huzinagaの533(21)/53(21)/(41)にHayのdのdiffuse関数を加えたものを, 炭素、窒素、酸素には6-31G(d)を、水素には6-31Gを用いてBHandHLYP法による計算を行った。蛋白質環境の静電効果には分極連続対近似(PCM)(比誘電率4.0)および点電荷近似を使った。蛋白質の点電荷には、AMBER96 force fieldのものを用いた。 Hrの酸素結合に関わる鉄のd軌道の軌道エネルギーと酸素のπ^*軌道の軌道エネルギーの差を算出したところ、PCMや点電荷近似により蛋白質の静電場の効果が入れることで、軌道エネルギーの差が減少した。このことから、蛋白質がつくる静電場は、d軌道の軌道エネルギーを上昇させ, 鉄と酸素の軌道相互作用を強めると考えられる。
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