2006 Fiscal Year Annual Research Report
多周波ESRを用いた希薄金属の電子構造と磁気特性に関する研究
Project/Area Number |
18750012
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
八代 晴彦 大阪大学, 極限量子化学研究センター, 特任研究員 (50360657)
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Keywords | 多周波ESR / 高周波ESR / 高磁場ESR / 金属タンパク質 / 整数スピン / サイレンスピン / 電子構造 / 広い線幅 |
Research Abstract |
本研究の目的は(1)高感度多周波ESR(〜300GHz)装置の開発、(2)(1)を用いたサイレントスピンをもつ金属タンパク質の電子状態と機能相関、(3)(1)を用いた左手系候補物質(LHM)の透磁率評価と材料開発へのフィードバックである。以下に本年度の成果を示す。 (1)に関し飛躍的な進展があった。すなわち偏光を利用した共振器のマッチング機構を開発し35,50,70,95,130GHzにおいて目標の感度を実現した。このマッチング機構の実現により十数テスラにおよぶ広い磁場掃引下でも非常に安定な測定が可能になった。これは、線幅の狭い標準試料に基づく感度指標に現れないが金属タンパク質試料にありがちな非常にブロードな信号も高感度かつ精密に測定できる事を意味する。また磁場変調(〜1mT)を用いない方式を採用し、1Tを超える線幅を持つ系では世界最高の感度を実現した。この機構は偏光を用いており周波数上限がなくより高周波への応用もできる。現在170GHz、250GHzの開発を進めている。 (2)還元型ヘム鉄と同じS=2をもつMn^<3+>置換ミオグロビンの測定を行った。(1)のシステムを用い33〜122GHzの5つの周波数で最大線幅約8Tにも及ぶ多周波ESRの観測に成功した。これは世界初の整数スピン金属タンパク質の多周波ESRである。解析を行った結果、市販ESRでは不可能なシングルイオン異方性D=-3.77cm^<-1> E=0.077cm^<-1>が精密に決定できた。このD値はモデル錯体類(〜2.5cm^<-1>)に比べかなり大きく金属タンパク質中の特異な電子構造を示唆している。デオキシヘモグロビンの測定も行いシグナルは観測できたが、35-130GHz(磁場0-14T)の測定ではスペクトル構造が背景に対して不明瞭で解析は困難である。130GHzで変化の兆しが見えており、170,250GHzの測定により解決されると考える。 (3)透磁率実部の評価のためESR吸収と同時に共振周波数も精密(10^<-10>)に測定できるシステムを開発した。薄膜試料は準備できており来年度はこのシステムを用いて組成と透磁率の相関を明らかにし、LHM材料開発へ指針を与える。
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Research Products
(6 results)