2006 Fiscal Year Annual Research Report
振動緩和と競合する新しい電子励起エネルギー移動機構の解明
Project/Area Number |
18750014
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
迫田 憲治 九州大学, 大学院理学研究院, 助手 (80346767)
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Keywords | エキシトン / 電子励起エネルギー移動 / 超音速ジェット / 孤立気相分光 / フェルスター理論 |
Research Abstract |
分子間で電子励起エネルギーが移動する現象は古くから知られており,フェルスターによって構築された電子励起エネルギー移動理論によって理解されてきた.しかしながら,近年行われた時間分解分光によって得られた励起エネルギー移動速度(フェムト〜ピコ秒程度)が,励起エネルギー移動の標準理論であったフェルスター理論によって全く説明出来ない(予測ではナノ秒程度)ことが問題となった.励起エネルギー移動は,非常に多くの物理・化学・生命現象に関わっているが,フェルスター理論の破綻は,従来,フェルスター理論に基づいて理解されてきた多くの現象が,新理論によって再検討されなくてはならない可能性があることを意味する.よって,信頼性の高い実験データを用いて,新規な理論を厳密に検証し,その適用範囲を明らかにするとともに,今まで実験的に明らかにされていなかった励起エネルギー移動の特徴を調査することが急務である.そこで本研究では,孤立気相中に生成した1-アザカルバゾール2量体の電子スペクトルを精密に測定することによって,電子励起エネルギー移動を引き起こすエキシトン相互作用の大きさを定量化し,エキシトンダイナミクスについて検討した.その結果,凝縮相での分光計測では得ることが困難な分子間伸縮振動モードのエキシトン相互作用を見積もることに成功し,電子励起エネルギー移動が分子間伸縮振動モードに著しく依存することを見出した.分子間の電子励起エネルギー移動の振動モード依存性が,分子間振動モードのような低振動数領域に見出されたことは,凝縮相で進行する光合成系のような電子励起エネルギー移動のダイナミクスにおける熱エネルギーの重要性を示唆している.よって,本研究から,これまであまり重要視されていなかった電子励起エネルギー移動と低振動モードとのカップリングをまじめに取り扱う必要があることが明らかとなった.
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Research Products
(1 results)