2007 Fiscal Year Annual Research Report
振動緩和と競合する新しい電子励起エネルギー移動機構の解明
Project/Area Number |
18750014
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
迫田 憲治 Kyushu University, 大学院・理学研究院, 助教 (80346767)
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Keywords | エキシトン / 電子励起エネルギー移動 / 超音速ジェット / 孤立気相分光 / フェルスター理論 |
Research Abstract |
電子励起状態におけるエキシトン相互作用は,分子集合体の電子励起状態の性質を理解するうえで極めて重要である.例えばDNA2重らせん構造を構成する核酸塩基は,紫外光を吸収することによって電子励起されるが,隣り合う核酸塩基間で電子励起エネルギー移動が生じる可能性が指摘されている.従来のエキシトン相互作用の研究は,主に分子が重なり合った(スタックした)構造を持つ分子クラスターが対象であった.最近,2つの分子間水素結合によって平面構造を形成するクラスターにおけるエキシトン相互作用の研究が報告されている.平面構造を有する分子クラスターのエキシトン相互作用は,スタックした構造をもつ分子クラスターのエキシトン相互作用に比べて小さいことが予想されることから,その励起状態ダイナミクスは,スタックした構造を有する分子クラスターの励起状態ダイナミクスとはかなり異なることが予想される.しかしながら,平面構造を有する分子クラスターのエキシトン相互作用に関する研究例は極めて少なく,そのダイナミクスには未解明な点が多い.本研究では,孤立気相中で平面構造を形成する1-アザカルバゾール2量体(1AC_2),及び重水素置換された1AC_2の蛍光励起スペクトルを測定することによって,1AC_2のエキシトン相互作用に関して詳細に調査した.その結果,孤立気相中の1AC_2の励起状態におけるエキシトン相互作用は,Weak coupling case(WCC)に分類されると結論した.この結果は,電子励起エネルギー移動の駆動力であるエキシトン相互作用が,振動運動に影響を受けることを示しており,従来,注目されてきた強いカップリングのエキシトン相互作用に加えて,WCCのエキシトン相互作用も電子励起エネルギー移動に重要な役割を果たしていることを示している.
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Research Products
(4 results)