2006 Fiscal Year Annual Research Report
大規模有機高スピン分子系に適した非経験的微細構造テンソル計算法の開発と応用
Project/Area Number |
18750016
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
豊田 和男 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 講師 (60347482)
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Keywords | 分子軌道法 / 電子相関理論 / 電子スピル共鳴 / スピンハミルトニアン / 微細構造 / 有機ラジカル / 高スピン分子 |
Research Abstract |
三重項およびそれ以上のスピン多重度を有する分子系、特に数十原子程度からなる有機分子への応用を想定し、スピン非制限分子軌道(UHF MO)に基づく微細構造テンソル(Dテンソル)計算のためのコンピュータプログラムを作成し、応用計算を行った。電子相関を取り込んだ計算においてはMP摂動論の二次のエネルギー(UHF-MP2)に対する二次の縮約密度行列からDテンソルの各成分を初めて計算し、UHF MOを用いた単一行列式参照型の近似的電子相関理論の水準において代表的な有機ラジカル分子系に対する計算が実験をどの程度再現しうるかについて検討した。 1.スピンハミルトニアンの一次の寄与であるスピン-スピン双極子(SSD)相互作用のみ用いた計算では異なるスピン多重度の混合(spin contamination)が軽度である場合には実験値かち推定されるSSDの寄与の計算の精度は比較的高い。一方フェニル基を持つ三重項カルベンやナイトレンでは実験との隔たりが非常に大きい。これらの系ではSCF水準でのスピン二乗演算子の期待値が約2.7であり、五重項以上のスピン成分が相当に混入している。他の同様の傾向を示す系でも実験的に決定されたDおよびEのパラメータと比較して数十パーセントの誤差がある場合があり、計算は一般にかなり不正確である。二次の寄与であるスピン軌道相互作用(SO)の寄与を考慮するプログラムを作成中であり、引き続きこの問題について検討していく。 2.最近密度汎関数法(DFT)の一電子スピン密度行列からDテンソルの計算が国内外のいくつかのグループで行われた。こうした計算の精度についても我々のプログラムを用いて現在検討中である。国外のグループによるUDFTよりRODFTの結果が優れているという報告についてはいくつかの分子の文献値を再現した。
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