2007 Fiscal Year Annual Research Report
固体表面機能を活用した脂質二重膜の構造・物性・非対称性制御とその評価
Project/Area Number |
18750021
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
手老 龍吾 Institute for Molecular Science, 生命・錯体分子科学研究領域, 助教 (40390679)
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Keywords | 表面・界面物性 / 脂質 / 走査プローブ顕微鏡 / 二酸化チタン / 蛍光顕微鏡 |
Research Abstract |
本研究の目的は固体表面上の脂質二重膜(supported planar bilayer=SPB)において、基板表面とSPB間の相互作用を明らかにすることである。今年度は基板として原子ステップとテラスからなるTiO_2(100)表面を用い、SPBへの固体表面の原子レベル構造の影響について調べることを目標とした。TiO_2(100)表面上での吸着ベシクルからSPBへの形状変化の過程において、実験条件次第で吸着ベシクルが、平面膜形成および安定吸着状態への変化、の2つの不可逆な経路を取りうることや、熱的には安定な吸着ベシクルを光誘起で領域選択的に平面膜へと形状変化させることなど、ステップ&テラスTiO_2表面に特異的な新規現象を見出した。固体基板と脂質膜間の相互作用エネルギーを詳細に計算し、SiO_2等に比べて著しく大きなvander Waals(VDW)引力がTiO_2上で働くことが原因であると結論した。TiO_2(100)表面の原子ステップは脂質膜の相分離構造に影響を及ぼすだけでなく、ゲル相ドメインの核生成がテラス上で選択的におきるなど、相分離の初期仮定にも影響していることを見出した。非常に強いVDW力のため、TiO_2(100)上のSPBにはベシクルや2層目の脂質膜が容易に吸着し、これらからの蛍光が障害となって蛍光退色後回復によって脂質分子の拡散係数(D)を求めることができなかった。そこで方針を変更し、1分子蛍光追跡(SMT)によるD測定を試みた。通常のSMT法はエバネッセント光を利用するためガラス基板上でしか行うことができないが、励起光の斜め照射を行うための試料セルを作製し、不透明なTiO_2基板上でのSMT測定に成功した。SMTの解析では統計処理を行うため、系によっては1000点以上のデータ点数が必要とされており、解析用プログラムの改良など効率の良い解析方法の確立が次年度の課題である。
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Research Products
(16 results)