2008 Fiscal Year Annual Research Report
固体表面機能を活用した脂質二重膜の構造・物性・非対称性制御とその評価
Project/Area Number |
18750021
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
手老 龍吾 Institute for Molecular Science, 生命・錯体分子科学研究領域, 助教 (40390679)
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Keywords | 表面・界面物性 / 脂質 / 走査プローブ顕微鏡 / 二酸化チタン / 蛍光顕微鏡 |
Research Abstract |
最終年度となる今年度は、これまでに基板および平面膜調製方法を確立した原子ステップ&テラスTiO_2表面上のSPBについて1分子蛍光追跡法(SMT)による分子拡散のその場観察を行った。従来のSMT法では基板がガラスや石英に限られていたが、励起光の斜照射によって基板の透明度・屈折率に依らずにSMT測定を行うことに成功した。この手法について再現性と確実性を高め、精度の高い実験手法として確立した。分子拡散係数(功を比較するための参照試料として不透明なSi(100)基板上の熱酸化SiO_2上に形成したSPBについて斜入射法によるSMT観察を行い、フォスファチジルコリン(DPoPC)-SPB中の蛍光標識脂質(Rb-DOPE)について拡散距離の平均二乗変位よりD=1.52μm_2/sと求めることができた。マクロな測定手法である退色後蛍光回復(FRAP)法により得られた値は歩2.38μm_2/sであり、良いオーダーの値が得られている。ステップ&テラスTiO_2(100)上に形成したDPoPC-SPB中でのRb-DOPEの拡散係数はD=1.42μm_2/sであった。SMT解析から刀を求める際には100-400本の拡散軌跡について統計処理を行っており、そのための解析プログラムも自作のものを用いた。異なる種類の色素標識脂質(BODIPY-H-PC)を用いた場合もTiO_2(100)上での分子拡散はSiO_2/(Si(100))上に比べて遅いことが示された。これはTiO_2上で非常に大きく作用するファンデルワールスカに起因するものであると結論した。 本研究課題によって固体表面構造とSPB中の分子挙動について原子・分子レベルでアプローチするための試料調整法と方法論の基礎を確立できた。しかし、当初計画していた二重膜内での非対称性や複雑組成の脂質膜における物性計測にまで至らなかったため、今後の研究における課題としたい。
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Research Products
(15 results)