2006 Fiscal Year Annual Research Report
新規アニオン性ホウ素求核種ボラニドの創製と反応、配位子としての応用
Project/Area Number |
18750027
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山下 誠 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 助教 (10376486)
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Keywords | ホウ素 / リチウム / ボリルアニオン / 求核種 / 結晶構造解析 |
Research Abstract |
ボリルアニオン前駆体としてN,N'-bis(2,6-diisopropylphenyl)-2-bromo-2,3-dihydro-1H-1,3,2-diazaboroleの合成を行い、これをTHF中、リチウムナフタレニドにより還元することで目的のボリルリチウムの発生に成功した。ボリルリチウムはDME溶液中でも発生させることが可能であり、この反応溶液を濃縮した後にヘキサンからの再結晶により、ボリルリチウムの単結晶が得られたのでX線結晶構造解析によってその構造を確定した。結晶中でホウ素周りはsp^2構造であり、2.291(6)ÅのB-Li結合を有していた。B-N距離およびN-B-N角をそれぞれ対応するフリーのボリルアニオン、プロトン化生成物であるB-H体と比較することで、このボリルリチウムはB-H体よりもむししろ、フリーのボリルアニオンに近い構造を持つことが明らかになった。このことより、ボリルリチウム中でホウ素はアニオンとしての共鳴構造の寄与を多く有していると考えられる。得られた単結晶をTHF-d_8に溶解させることで各種NMRスペクトルの測定を行った。1H NMRにおいてはフリーのDMEが観測されたことから、溶液中ではボリルリチウムのリチウム原子にTHFが配位している構造の存在が示唆された。11B NMRにおいてはδ_B45.4という低磁場にに半値幅535Hzの幅広いピークが観測され、ボリルアニオンと等電子骨格のN-複素環カルベンが低磁場シフトしたブロードなピークを与えることと同様の傾向を示していた。7Li NMRではδ_<Li>0.46に半値幅36Hzの幅広いピークを与えたことから、Li核と四極子核であるホウ素との結合が示唆され、溶液中でもボリルリチウムはB-Li結合を有することが明らかになった。また、ボリルリチウムをMeOTf,n-BuCl,PhCHOと反応させるとそれぞれB-Me体、B-nBu体、ボリルベンジルアルコールが得られたことから、ボリルリチウムは珍しいホウ素求核種として作用することが明らかになった。ボリルリチウムはまた、臭化マグネシウムとも反応して、対応するボリルマグネシウムを与え、これがベンズアルデヒドと反応したら珍しい化合物であるベンゾイルボランが得られた。
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