2006 Fiscal Year Annual Research Report
新規な含高周期典型元素拡張π電子共役系化合物の構築
Project/Area Number |
18750030
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
笹森 貴裕 京都大学, 化学研究所, 助手 (70362390)
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Keywords | 高周期15族元素 / 立体保護 / ジホスフェン / フェロセン / アントラセン / サイクリックボルタンメトリー / 蛍光 / π共役 |
Research Abstract |
本研究は、新規な含高周期14族および15族元素拡張π電子系の構築とその物性解明を目的としている。本年度は、ジホスフェン(P=P二重結合化合物)のπ電子をアントラセンユニットで拡張した、9-アントリルジホスフェンの合成に取り組んだ。反応活性なジホスフェン部位を立体的に保護する立体保護基として、これまでに反応活性化学種の安定化に実績のあるTbt基(Tbt=2,4,6-[CH(SiMe_3)_2]_3-C_6H_2)を用いた。すなわち、Tbt基を有する一級ホスフィンTbtPH2と文献基地化合物である9-アントリルジクロロホスフィン(9-Anth)PCl_2(9-Anth=9-Anthryl)の混合物に対し、塩基としてDBUを加えることにより、目的とする初めての安定な9-アントリルジホスフェンTbtP=P(9-Anth)を赤色結晶として合成・単離することに成功し、その構造・物性を解明した。エックス線結晶構造解析の結果から、アントラセン部位とジホスフェン部位のπ共役は比較的小さいことが示唆されたが、アントラセン部位の分子間距離が約3.5-3.6Å程度であり、結晶中におけるアントラセン部位のπ-πスタッキングの存在が示唆された。またサイクリックボルタンメトリーにより、酸化還元挙動を解明したところ、還元領域に二つの可逆な一電子酸化還元波が観測され(-1.73,-2.32V vs Ag/Ag^+)、第一還元電位は対応するジホスフェンTbtP=PTbt(-1.93V vs Ag/Ag^+)よりも小さいことが判った。すなわち、アニオンラジカル状態ではP=Pユニットとアントラセンユニット間に電子的な相関が存在することが支持された。また、9-アントリルジホスフェンは、微弱ながら蛍光特性(Φ=1.2×10^<-3>,hexane)を有することが判った。これまで蛍光特性を有するジホスフェン類は全く報告例がなく、本研究が初めての例である。今後、新規物性の発現を目的とし、さらに高周期の元素を含むπ電子拡張共役系の構築を検討する。
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