2006 Fiscal Year Annual Research Report
バックミンスターフラーレンC60およびヘテロフラーレンの収束的全合成
Project/Area Number |
18750032
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
雨夜 徹 大阪大学, 大学院工学研究科, 助手 (20397615)
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Keywords | フラーレン / スマネン / π共役 / ボウル / 非平面 / C_<60> / ヘテロフラーレン |
Research Abstract |
バックミンスターフラーレンC_<60>などのフラーレン類は、その特異的な性質から様々な分野で注目を集めている。一方、ヘテロフラーレンや高次フラーレンに関しては、化合物の供給において課題がある。これらフラーレン類を有機合成的に大量にかつ自在に合成できれば、上述の課題を解決するばかりか、既存の分子にとらわれない新規フラーレンの創出が可能になる。本研究では球状のフラーレン骨格を合成するにあたり、ボウル状分子を土台とする合成法を検討する。 本年度は、C_<60>を標的として取り組んだ。C_<60>の部分構造であるC_<3v>対称なボウル状分子スマネンに着目した。スマネンは三箇所にベンジル位を有するので、アニオン経由の置換基導入が可能であると考えられる。標的化合物であるC_<60>は合成の最終段階において対応する炭素数60の前駆体を真空熱分解することで合成することを計画した。対応する前駆体を合成するためには、スマネンのベンジル位に種々の置換基を導入する方法論の開発が必要である。そこで、スマネンのベンジル位への置換基導入反応を種々検討した。その結果、相間移動触媒存在下、水酸化ナトリウムを塩基として用いる非常に穏和な条件にて、ベンズアルデヒドとの縮合反応が効率よく進行し、対応する共役系が拡張したトリスベンジリデンスマネンが高収率で得られることが明らかになった。さらに、本反応は種々の芳香族アルデヒドとの縮合に応用できることも判明した。得られた種々の誘導体の分光学測定によりHOMO-LUMOバンドギャップが小さくなることが示され、トリスターチエニリデン誘導体においてはとりわけ顕著なバンドギャップの縮小が観測された。一方、アリルハライドおよびベンジルハライドに対するアルキル化も、同一の条件で進行することも見出した。以上、スマネンのベンジル位に置換基としてベンジリデン基、アリル基、およびベンジル基を導入する方法を確立した。
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