2006 Fiscal Year Annual Research Report
光駆動型ハイブリッド触媒の開発と環境調和型物質変換反応
Project/Area Number |
18750047
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
嶌越 恒 九州大学, 大学院工学研究院, 助手 (00284539)
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Keywords | ビタミンB12依存性酵素 / 有機塩素化合物 / 酸化チタン / ハイブリッド触媒 / ラジカル型有機合成反応 / コバルト-炭素結合 / アルキル錯体 / 環境調和型 |
Research Abstract |
ビタミンB_<12>はコバルトを中心金属とする錯体であり、メチオニン生合成、官能基転位反応、脱塩素化呼吸を司り、合成化学的観点からも極めて興味深い。その鍵中間体はコバルト-炭素結合を有する有機金属錯体である。この結合はCo(I)種と有機ハロゲン化物との反応により生成し、また可視光照射により開裂させることが出来る。コバルト-炭素結合はその生成においては脱ハロゲン化反応を、開裂においては有機ラジカル種の生成という性質を併せ持つ。本研究ではこのようなビタミンB_<12>コバルト錯体の特徴に着目し、ビタミンB_<12>錯体を合成し、酸化チタンと複合化させることで、光増感作用を付与したハイブリッド触媒の開発を行った。酸化チタンの光照射により生成する伝導帯の励起電子は、-0.5V vs. NHEの還元力を有し、ビタミンB_<12>錯体を反応活性なCo(I)種へ還元出来る。そこで側鎖にカルボキシル基を有するビタミンB_<12>錯体を合成し、酸化チタン表面に固定化したハイブリッド触媒を合成した。本ハイブリッド触媒をエタノールに懸濁し紫外線照射すると、Co(I)種の生成を示す暗緑色へと変化した。基質として有機塩素化合物(DDT)を加えたところ、脱塩素化反応が進行した。反応後は濾過するのみでハイブリッド触媒を容易に回収出来、クリーンな光反応を駆動力とした点と併せ、環境に優しい物質変換技術と言える。さらに本性質を利用し、Bu_3ShH/AIBN法の代替となるラジカル型有機合成反応へと応用した結果、環拡大反応(5員環〜7員環)、フェニル基転位反応、環化反応などが効率良く進行することを見出した。
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