2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18750048
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
蒲池 高志 九州大学, 先導物質化学研究所, 研究員 (40403951)
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Keywords | 金属酵素活性種 / 密度汎関数法 / QM / MM法 |
Research Abstract |
ビタミンB12は十数種の酵素の補酵素として働く事が知られている。このうちジオールデヒドラターゼは、1,2-プロパンジオールの脱水反応を触媒する酵素である。本酵素による反応は、アデノシルコバラミン中のCo-C結合がホモリティックに開裂することにより始まる。これにより生じたアデノシルラジカルが基質の1位の炭素から水素を引き抜き、1,2-diol radicalが生成する。この後、水酸基の転移から1,1-diol radicalを経てアルデヒドと水分子に分解される。近年、Toraya、YasuokaらはジオールデヒドラターゼのX線構造解析を行い、基質1,2-プロパンジオールはアデノシルコバラミン中のCoから約11.7の距離にあるK+に配位していることを見出した。このX線構造に基づき、全原子(約13500原子)を含む現実モデルを構築し、QM/MM法を用いてこの反応の理論的解析を行った。我々はこの反応において重要なアミノ酸残基と考えられてきたHis143をAlaに置換したジオールデヒドラターゼ変異体His143Alaおよび、Glu170を置換したGlu170Gln、Glu170Ala、Glu170Ala/Glu221Alaの合計四つの変異体についてQM/MM計算によりその触媒機構を明らかにした。Glu170Gln変異体での水酸基転移の活性化エネルギーは17.4kcal/molとなり、野生型での活性化エネルギー13.6kcal/molに比べて、大きく上昇することが判明した。実験的にもこの変異体は野生型の1%以下の活性しかないことが知られており、この高い活性障壁が反応の進行を妨げていると予想される。これが変異体での反応性低下の直接的原因であることが判明した。
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