Research Abstract |
16族原子を2種以上一つの金属原子上に持つ金属錯体は,多核錯体の原料として,あるいは,小分子活性などへの応用が期待される。今回,アニオン性モリブデン錯体,(Et_4N)[Mo^vO(bdt)_2](1),(Et_4N)_2[Mo_<IV>S(S_2C_6H_8)_2](2)(bdt=benzene-1,2-dithiolate,S_2C_6H_8=cyclohexene-l,2-dithiolate)とBu_4NSHおよびMe_3NOとの反応により,[Mo^<6+>O(S)(dithiolate)_2]^<2->を調製しそれらの安定性を検討した。アセトニトリル中において,錯体1とBu_4NSHは1:1で反応し,オキソスルフィド骨格を持つ[Mo^<VI>(O)(S)(bdt)_2]^<2->(3)および[Mo^<IV>O(bdt)_2]^<2->を生成した。Mo(V)の不均化反応が進行したと考えられる。しかし,高濃度条件では3も不均化反応を起こし,[Mo^<VI>O(S_2)(bdt)_2]^<2->錯体と[Mo^<IV>O(bdt)_2]^<2->を生成することが明らかとなった。 錯体2はアセトニトリル中でMe_3NOと反応した。反応後の吸収スペクトルが錯体3と類似しているため,錯体2はMe_3NOから酸素原子を引き抜き,[Mo^<VI>(O)(S)(S_2C_6H_8)_2]^<2->(4)へと変化したと考えられる。さらに,4も高濃度条件では不均化反応を起こしたが,3とは異なり[Mo^<VI>(O)_2(S_2C_6H_8)_2]^<2->および[Mo^<VI>(S)_2(S_2C_6H_8)_2]^<2->を生成した。 以上のように,オキソースルフィド基を持つアニオン性モリブデン錯体は配位子や濃度によって[Mo^<4+>O]^<2+>,[Mo^<6+>O_2]^<2+>,[MoO(S_2)]^<2+>,[Mo(S)_2]^<2+>骨格を持つ錯体へと変化することが明らかとなった。
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