Research Abstract |
錯解離反応不活性な金属結合部位(メチルEDTA骨格)と発光団(フルオレセイン骨格)をスペーサーで結合した新規配位子をキャピラリー電気泳動-レーザー励起蛍光検出システム(CE-LIF)に導入し,これまで蛍光検出が困難であった常磁性金属および重金属イオンの超高感度蛍光検出に成功した(Electrophoresis,14,2448-2457(2007))。この時,発蛍光性母錯体に対し,泳動液中に第二の配位子を添加し,電気泳動揚に三元錯体動的平衡を持ち込むことにより,錯体間高度分離を達成した。三元錯体形成試薬としては,特に,ヒドロキシイオンが有効であることを見出した。検出感度は数十ピコMであり,絶対感度でサブアトモルと一般的なCEの感度の十万倍の高感度を達成した。 さらに,金属結合部位の配位骨格を8座大環状(DOTA骨格)および8座非環状(DTPA骨格)とした配位子を合成し,これをCE-LIFに導入した。さらに,金属間精密分離を達成するために三元錯体形成試薬の導入を試みたが,十分な分離は得られなかった。これは,これらの8配位金属錯体系では残余配位座が少ない,或いは存在しないため,三元錯体の形成能が極めて低いためと考察した。一方,これらの錯体系にはカチオン性ポリマーの添加が非常に有効であることが発見した。加えて,カチオン性ポリマーの種類によって分離選択性が異なることが明らかとなった。これは,金属錯体との多点電荷-電荷相互作用の存在を示唆している。また,DOTA骨格を有する配位子では,メチルEDTA骨格では錯体の泳動中の解離により検出できなかった金属イオン(Ca2^+,Mg2^+,Pb^2+,Hg2^+)も解離不活性錯体として検出できることが分かり,剛性の高い配位骨格が解離不活性錯体の形成およびCE用金属蛍光プローブの基本骨格として有用であるとの知見を得た。 以上の様に,従来にない高感度を有するCE用の金属蛍光プローブを開発するとともに,分離場およびプローブの分子設計に有用な知見を得ることができた。
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