2006 Fiscal Year Annual Research Report
ホスフィニン配位子を持つ遷移金属錯体の合成と触媒活性・機能
Project/Area Number |
18750076
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
三宅 由寛 東京大学, 大学院工学系研究科, 助手 (00347270)
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Keywords | 有機化学 / 有機金属化学 / 触媒化学 |
Research Abstract |
ピリジンの窒素原子を同族のリン原子に置き換えたホスフィニンは芳香族に由来する安定性とリン原子上に局在化した低いLUMOレベルに由来する高いπ受容能を併せ持つため、良い電子受容性配位子として働くことが予想される。しかし、ホスフィニン誘導体を用いた遷移金属錯体の合成、機能物性、触媒活性等に関する研究は限られている。そこで申請者はホスフィニン配位子を有する新規遷移金属錯体を合成および触媒反応への応用を検討した。本年度は2,2'-ビピリジンの類似体である、4,4',5,5'-テトラメチルビホスフィニン配位子(tmbp)を有する遷移金属錯体触媒を用いたアルキンのヒドロシリル化反応を検討した。種々の遷移金属錯体を用いて検討を行ったところ、イリジウム錯体を用いたときに高い触媒活性を示した。特にイ・ンデニル基を有するIr(η^5-C_9H_7)(cod)を前駆体として用い、tmbp存在下で反応を行ったところ、高トランス選択的にアルケニルシランが得られた。これまで報告されているにイリジウム触媒によるアルキンのヒドロシリル化ではシス選択性を示す場合がほとんどであり、本反応系でもtmbpを添加しない場合にはシス体が優先的に得られた。一般にアルキンのヒドロシリル化においては三重結合への挿入後、直接還元的脱離した場合にはトランス体が得られ、中間体を経由し異性化後に還元的脱離した場合にはシス体が得られる。本反応系では、tmbpの強いπ受容能のため、中間体を経由した異性化よりも速い還元的脱離が進行するために、トランス体が優先的に得られると考えられる。
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