2006 Fiscal Year Annual Research Report
遷移金属クラスターによる原子移動型ラジカル反応制御法の開発
Project/Area Number |
18750080
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
大石 理貴 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助手 (20376940)
|
Keywords | ラジカル反応 / 遷移金属 / クラスター / 常磁性錯体 / 触媒 / 環化反応 / シクロペンタジエニル / ヒドリド |
Research Abstract |
原子移動型ラジカル環化反応(ATRC)の優れたクラスター触媒を創製するため、ルテニウムを含む種々の三核遷移金属ヒドリドクラスター(Cp'Ru)_3(H)_5(1), (Cp'Ru)_2(Cp'W)(H)_5(2), (Cp'Ru)(Cp'W)_2(H)_7(3), (Cp'Ru)_2(Cp'Rh)(H)_5(4), (Cp'Ru)_2(Cp'Ir)(H)_5(5)を用い淋アリル-α-ブロモアミドの触媒的ラジカル環化を検討し、触媒活性および目的環化生成物/還元副生成物の反応選択性を比較検討した。いずれにおいても副生成物は数パーセント生成したものの、前周期よりのタングステンを含む3において高活性が得られた。生成する錯体と有機物の構造について知見を得るため、単純有機ハロゲン化物との化学量論反応を検討した。t-BuBrは、炭素-臭素結合解離エネルギーが70.0±1.5kcal/molであり、反応性においてt-BuCl(84.1±1.5)より優れ、t-BuI(54.3±1.5)より劣っているため、錯体によって反応性の差が得られる有機ハロゲン化物と期待された。錯体の半減期は、1,2,4,5では100時間以上と長く、錯体3では約13時間と極端に短縮された。また、二段階で反応が進行し、錯体の構造はそれぞれNMR, X線結晶解析により決定した。これらは、上述の触媒的ラジカル環化においてさらに高い活性を示した。生成有機物として2-メチルプロパンが生成したため、水素の少ない常磁性錯体(Cp'Ru)(Cp'W)_2(H)_4を新規に設計・合成し、t-BuBrとの素反応を検討した結果、炭素-臭素結合の水素化を抑制できるという知見を得た。 以上より、遷移金属ヒドリドクラスターとしてルテニウムと2つのタングステンからなる錯体に由来する構造が触媒的ラジカル環化反応に極めて有効であることを見出した。
|