2008 Fiscal Year Annual Research Report
遷移金属クラスターによる原子移動型ラジカル反応制御法の開発
Project/Area Number |
18750080
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
大石 理貴 Tokyo Institute of Technology, 大学院・理工学研究科, 助教 (20376940)
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Keywords | ラジカル反応 / 遷移金属 / クラスター / 常磁性錯体 / 触媒 / 環化反応 / シクロペンタジエニル / ヒドリド |
Research Abstract |
昨年度の研究成果においてN-アリル-α-ハロアミド誘導体のラジカル環化反応における最も活性な金属クラスター触媒として1つのルテニウムと2つのタングステンからなるヒドリド錯体を種々検討した結果を報告した。触媒量の低減、反応基質の適応性の向上が必要である。副反応等を明らかにするため、非環化基質であるN-プロピル-α-プロモアミドを用い化学量論反応を検討した。基質のアミド保護基であるトシル基が脱保護された有機物が生成する結果となった。トシルアミドは、N-SO_2結合が安定なため、通常、強塩基などハードな条件下で結合切断されるが、本反応系は中性条件であるため、電子不足アリール基としてのトシル基への遷移金属中心からの逆供与によって生じたもの考えられる。より単純な基質分子の系として、有機ハロゲン化物を開始剤、不飽和化合物をモノマーとするラジカル反応あるいはラジカル重合制御へと研究の方向性を修正するため、常磁性のルテニウム-タングステン系ヒドリド錯体の合成と反応性を検討した。含ハロゲンヒドリド錯体とナトリウムナフタレンとの反応により好収率で(Cp*Ru)(Cp*W)_2(X)(H)_3(X=H, Br, I)を与えることを見出した。(Cp*Ru)(Cp*W)_2(H)_4(X=H)と過剰の臭化アルキルとの反応を検討した結果、1, 2級臭化物との反応では(Cp*Ru)(Cp*W)_2(Br)(H)_3とアルカンを与え、3級の臭化tert-ブチルからは反磁性の(Cp'Ru)(Cp'W)_2(Br)(H)_4が生成した。前者の反応では、生成するアルキルラジカルによるヒドリド引き抜きによって起こると考えられ、単純な炭素-ハロゲン結合を含む基質の原子移動ラジカル反応で鍵となり得る新たな常磁性錯体の創製に成功した。
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