2006 Fiscal Year Annual Research Report
放射光を利用した時間分解小角X線散乱による生分解性高分子のラメラ構造形成と熱挙動
Project/Area Number |
18750107
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
佐藤 春実 関西学院大学, 理工学研究科, 博士研究員 (10288558)
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Keywords | 生分解性高分子 / ポリヒドロキシブタン酸 / 時間分解小角X線散乱法 / ラメラ構造 / 熱的挙動 |
Research Abstract |
微生物が再生可能資源から生合成される生分解性高分子の一つであるポリヒドロキシブタン酸(PHB)は天然由来の高分子化合物の中でも熱可塑性を有する数少ない生分解性ポリマーであるため、合成高分子材料の代替材料としてだけでなく、医用材料としても期待されている。 本研究ではPHBおよびその共重合体の結晶構造とその熱的挙動について、放射光を用いた時間分解小角X線散乱法(SAXS)および赤外分光法による温度変化測定、x線回折測定、Dsc測定法等を組み合わせることにより、官能基レベルから分子全体の構造にわたり温度変化に伴う結晶の格子定数の挙動や、らせん構造の変化、およびらせん分子間に形成されていると考えられるC-H…O=C水素結合の熱的挙動について調べている。特にSAXS測定からはラメラの厚みに関する情報を得ることができるため、放射光による時間分解SAXS測定により、等温結晶化あるいは融解過程における結晶部分とアモルファス部分の厚みの時間変化を詳細に観測することができる。それによりPHBおよびP(HB-co-3HH)の結晶化のメカニズムを明らかにすることができると考えられる。PHBおよびその共重合体における時間分解SAXS測定の等温結晶化過程の結果から、PHBホモポリマーのラメラ厚は共重合体に比べると厚く、結晶部分の厚みはほぼ初期に決定し、結晶化過程においてはほとんど変化がみられなかった。一方、アモルファス相の厚みは減少し、それに伴いラメラ全体の厚みも減少した。このような放射光を用いた時間分解SAXS測定は、結晶化のメカニズムを詳細に調べるには非常に有効な方法であり、これによりポリマーの結晶構造に関する基礎的な知見を得るだけでなく、応用面への発展に大きく貢献するものと思われる。
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