2006 Fiscal Year Annual Research Report
フロンティア軌道の形状に関するNMR研究:d電子はどこまで非局在化できるのか
Project/Area Number |
18750109
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
丸田 悟朗 北海道大学, 大学院理学研究院, 助手 (00333592)
|
Keywords | フロンティア軌道 / 固体高分解能NMR / 磁性金属錯体 / 電子スピン密度 / 超微細結合定数 / 分子磁性 / 原子価互変異性 / 常磁性NMR |
Research Abstract |
常磁性金属錯体の不対電子が入っている半占軌道(SOMO)は、金属イオンに完全に局在しているというわけではなく、配位子の上にまで広がっている。本研究では、固体高分解能^1H,^2H,^<13>C,^<15>N-NMR測定により、ニッケル,コバルトおよびマンガン錯体について、配位子の非配位原子の超微細結合定数(hfcc)を求めた。 1.高い対称性をもつ[M^<II>(Him)_6]^<2+>イオンについて、イミダゾール配位子のhfccを決定した。中心金属イオンがコバルト(d_π=5,d_σ=2)のときは,ニッケル(d_π=6,d_σ=2)のときにはない、d_π不対電子が存在する。研究の結果、d_π不対電子のイミダゾールへの非局在化の度合いは、d_σ不対電子のそれと比べて小さいことがわかった。 2.2核金属錯体Ni_2(μ-H_2O)(μ-Ac)_2(Him)_4(Ac)_2について、酢酸イオンのhfccを決定した。この錯体の酢酸イオンには、架橋しているものとしていないものがある。研究の結果、架橋していない酢酸イオンへの不対電子の染み出しは、直接に配位している金属からのみであるのに対して、架橋している酢酸イオンのhfccは、両方の金属の影響をうけること、すなわち、二つのニッケル(II)イオンのスピンの相対配向に依存することがわかった。 3.原子価互変異性を示す錯体Mn(bupy)_2(3,6-DBQ)_2について、マンガンの価数が4価(d_π=3,d_σ=0)のときと3価(d_π=3,d_σ=1)のときの、tert-ブチル基のhfccを決定した。研究の結果、ブチルピリジンのtert-ブチル基では、4価から3価になるとhfccの絶対値が小さくなることがわかった。これは配位子に染み出すσスピンとπスピンの向きが、逆向きであることを意味する。
|