2007 Fiscal Year Annual Research Report
フロンティア軌道の形状に関するNMR研究:d電子はどこまで非局在化できるのか
Project/Area Number |
18750109
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
丸田 悟郎 Hokkaido University, 大学院・理学研究院, 助教 (00333592)
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Keywords | フロンティア軌道 / 量子化学計算 / 固体高分解NMR / 常磁性金属錯体 / スピン密度分布 / 3d金属錯体 / 軌道コヒーレンス / バンド計算 |
Research Abstract |
本研究では、常磁性金属錯体のSOMOの形状を、固体高分解能核磁気共鳴(NMR)スペクトルから得られる超微細結合定数(hfcc;スピン密度分布の目安)から決定した。研究対象とする系は、Cr^<III>〜Cu^<II>の3d金属錯体とした。量子化学計算を相補的に実行し、光物性、磁性、伝導性など物性を発現する物質や、電子伝達タンパク質などの物性/機能の発現機構を、配位子にまで拡がったSOMOの形状から説明を行った。従来は溶液の常磁性NMRや拡張ヒュッケル法などを組み合わせることで説明がなされてきたが、どこまで広がるのか?という疑問を突き詰め配位子末端の置換基まで考慮すると、本方法論では困難が生じる。また、固体のバンド計算によりフロンティア軌道の広がりを考慮しても、「結晶全体に拡がっている」程度の解しかえられず、十分な回答を得ることは一般に困難である。本研究で検討対象としているのは、軌道のコヒーレンスがどこまで広がっているのか、ということである。そこで本研究では、冒頭で述べた手法に基づき、まず、3d金属錯体のSOMOが、(1)どれくらい(どこまで)、(2)どのように配位子の上に広がっているのか、また、(3)なぜそのように拡がっているのかを明らかとした。具体的には、合成した既知物質のNMR測定より各系のhfccを決定し、非局在化したSOMOとスピン密度分布に合理的な説明を与えた。従来より与えられていた「測定した物質のhfccがこうであった、SOMOがどうであった」という報告ではなく、「どのようなスピン密度分布が得られても、例えそれが科学的直感に反していても、それは必ず理解でき、説明可能である」ことの一例を本研究にて示すことができた。
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